ホンダがカナダにEV製造拠点を新設、バッテリーは自社生産:電動化(2/2 ページ)
ホンダはEV専用の完成車工場やバッテリー工場の建設、材料メーカーとの共同出資会社設立など、北米でのEVの包括的バリューチェーン構築に向けた検討を開始した。
バッテリーを自社生産する理由
バッテリーの自社生産に乗り出すに当たって、材料メーカーとともに部材の生産拠点も設ける。正極材に関してはPOSCO Future Mが、セパレーターは旭化成がパートナーとなり、共同出資で正極材やセパレーターの工場をそれぞれ建設することを検討する。カナダではバッテリーを自社生産するが、LGエナジーソリューション(米国向け)やCATL(中国向け)とのパートナーシップは継続し、既存の計画でのバッテリーの外部調達に変更はない。
一般的に、バッテリーの生産に必要な投資は非常に大規模だ。EVの普及拡大に合わせてバッテリーの供給を拡充するには、さらに投資の負担が重くなる。そのような中でもバッテリーを自社生産し、材料メーカーとの共同出資にも乗り出すのは、電動化が進む中で重要度が増すバッテリーの全体像や勘所を把握し続けるためだ。クルマ1台に占めるバッテリーのコストは3〜4割と大きく、リソースサーキュレーションに取り組む上でも手の内に収めておく必要があった。
また、POSCO Future Mや旭化成と共同出資で部材の工場を設けることで、安定的な調達やコスト優位性の確保、最新技術の優先的な適用などのメリットを見込む。
今回の投資で、原材料の調達、部材やバッテリー、そしてEVの生産までのバリューチェーンを手の内化する。バッテリーの安定供給によりコスト変動への耐性を高める他、自社生産や現地調達効果によって現行のバッテリーから20%以上のコスト削減を見込む。
使用済みバッテリーの回収や二次利用、リサイクルに関しても、ホンダのバリューチェーンに含めていくことを検討する。その中では、GSユアサが果たす役割も大きい。ホンダとGSユアサが共同出資で設立したバッテリー研究のHonda GS Yuasa EV Battery R&Dや、バッテリー生産だけでなくリサイクルの知見も持つブルーエナジーとの協力が生きるという。
ホンダはEVをどこまで廉価にできるかが今後の電動化戦略で重要になるとみている。ただ、現状のバッテリー搭載量のままではコストを下げるのが難しいと見込み、電費の改善によるバッテリー搭載量の抑制に取り組む。電費を良好にするには、走行抵抗の低減やバッテリーの制御などさまざまなアプローチがある。バッテリーの材料や製造の“レシピ”以外にもEVを廉価にするカギがあるとホンダは考えている。
ホンダが2024年1月のCESで披露したEVのコンセプトモデル「0シリーズ」も、同様の方針に基づいている。バッテリーの搭載量拡大にこだわらず、電費性能の高さによる「軽さ」やフロア高を抑えたEVプラットフォームによる「薄さ」、知能化による「賢さ」を重視する。
カナダの生産拠点としての強み
カナダ オンタリオ州は、原子力や再生可能エネルギーによるクリーンエネルギーが9割を占めており、生産領域のカーボンニュートラル実現に向けて有利な立地となる。
USMCA(米国、メキシコ、カナダ協定)の枠組みによってインフラ削減法(IRA)への対応が有利になることや、原材料や資源の面でもカナダを有望視している。インベストメントタックスクレジット(ITC)によって工場の設備や建屋への投資が優遇されることもカナダでEV向けの投資を強化するメリットだという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ホンダ日産が協業の検討を開始、「なるべく短期間で結論を出す」
日産自動車とホンダは自動車の電動化や知能化に向けて戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結した。 - ホンダがEVをゼロベースで作る、「既存のスペック競争には参加せず」
ホンダはEVのグローバルモデル「0シリーズ」を発表した。 - ホンダが中国向けに新たなEVのラインアップ、2027年までに6機種
ホンダは中国市場に投入するEVの新シリーズ「Ye」を発表した。 - 「ラボなら良品率100%」、全固体電池の量産へ着実に進む日産
日産自動車は横浜工場に建設中の全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。2024年度中の稼働を目指す。 - 日産が新たな中計を発表、2026年度までに新型車30車種
日産自動車は販売台数の増加と収益性の向上に向けた2030年までの中長期的な取り組みをまとめた経営計画「The Arc」を発表した。2026年度までに足元から100万台の販売増と、営業利益率6%以上の達成を目指す。 - ボッシュが電動車向けバッテリーセルの内製化を断念、高過ぎる投資コスト
Robert Bosch(ボッシュ)が電動車向けの駆動用バッテリーのセルを内製化しない方針を示した。 - 過去も今も、これからも……変わらない○○らしさ
自分たちらしいモノを作っている、とハードウェアでもソフトウェアでも思ってほしいです。