CHAdeMO規格、次の一手はどうするのか:和田憲一郎の電動化新時代!(51)(3/3 ページ)
2024年に入りハイブリッド車の話題が多くなってきたが、電気自動車も踊り場を経た後で再び市場が拡大するといわれている。そのような中、日本発の急速充電規格CHAdeMOの普及を進めたCHAdeMO協議会は、今後どのような方針で進めていくのだろうか。CHAdeMO協議会にインタビューを行った。
電動自転車向けCHAdeMOの状況
和田氏 EPAC CHAdeMOについてはどのような状況か。
箱守氏 電動アシスト自転車「EPAC」は日米欧の中で、特に欧州で人気が高い。このような電動アシスト自転車やスポーツバイクなどを対象として、多くの企業と協力して、新たな充電規格EPAC CHAdeMOを2022年に公表した。CHAdeMO協議会としては、多くのEPACユーザーに共用充電器を活用して充電することで、安全安心な充電サービスを提供できるよう目指している。
CHAdeMO規格の急速充電器の使い勝手について
和田氏 CHAdeMO協議会ではCHAdeMOの規格を決めているが、急速充電器の使い方は各急速充電器メーカーが決めており、各社バラバラでユーザーにとっては使い勝手があまり良くないと思われる。CHAdeMO協議会は規格を決める団体であるが、今後EVをさらに普及させ、多くの方々に使用していただくならば、急速充電器メーカーや設置企業などと連携して、ピクトグラムなどユーザーフレンドリーな表示や使い勝手のガイドラインを策定することはどうか。
荒井氏 ご指摘いただいた件については、ChaoJiの広報活動なども含めて、関係者とどのように対応するか検討していきたい。
取材を終えて
冒頭、HEVの話題が多くなってきたことに触れた。一方、欧米でEVは成長が鈍化しているとの情報もある中、BYDは2024年2月、中国で「ガソリン車よりも安い電気自動車」をキャッチフレーズに低価格戦略を打ち出した。その結果、テスラをはじめ他の自動車メーカーも大幅な値下げを実施した。2024年は「EVは踊り場」と予想されていたものの、一気に再拡大する様相を見せてきた。
このような中、CHAdeMO協議会の事務局メンバーに取材したことで気になったことがある。1つは、広報戦略の不足である。確かにCHAdeMO協議会は充電規格を取り決める団体であるが、どちらかといえば技術確立に重点を置いており、自らもしくは共同開発した規格をどのようにアピールし、広げていくかの広報戦略が不足しているように見受けた。せっかく新しい規格を作っても、多くの人に使ってもらえなければ意味がなくなってしまう。
もう1つは使い勝手に関する懸念である。急速充電規格を制定し、実際の商品化は各急速充電器メーカーに任せていただけでは、使い勝手がばらばらとなる。EVに関して深い知識をもつユーザーであれば問題ないが、今後、多くの人々が利用するためにはユーザーフレンドリーな視点が重要となる。
EVシフトが踊り場から再拡大の様相を見せている今だからこそ、急速充電の規格団体という枠組みを一歩踏み出し、業界のみならず一般の方々にも向けて、急速充電に関する普及活動を展開していただくことを期待したい。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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