いすゞ自動車が2030年度に向けた新中計、自動運転や通信に注力:電動化
いすゞ自動車は2030年度に向けた中期経営計画を発表した。自動運転、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルの3領域を柱とし、将来の収益源として育てる。グループ全体での既存事業の強化も推進し、2030年度に売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指す。
いすゞ自動車は2024年4月3日、2030年度に向けた中期経営計画を発表した。自動運転、コネクテッドサービス、カーボンニュートラルの3領域を柱とし、将来の収益源として育てる。グループ全体での既存事業の強化も推進し、2030年度に売上高6兆円、営業利益率10%以上を目指す。新車販売台数は同年度に85万台を目標とする。
2030年に向けて価値創造を商品軸からソリューションに広げビジネスモデルの変革を進める。現在の収益拡大と未来の収益への投資を両輪とし、あらゆるステークホルダーが抱える課題を解決する商用モビリティソリューションカンパニーを目指す。
注力する3領域は、2030年代に売上高1兆円規模の事業化を目指す。自動運転に関しては、レベル4のトラックやバスの事業を2027年度以降、順次開始する。これに向けて2024年春から自動運転技術の獲得や基礎的なサービスの作り込みを本格的に開始し、アライアンスパートナーとの協働によるモニター実証を経て、高速道路やハブ間での輸送や路線バス向けのソリューションとして展開する。
コネクテッドサービスでは、運送事業者や荷主の輸配送効率を高めるサービスの提供や、商用車情報基盤「GATEX(ゲーテックス)」での業界を超えたデータ連携によるサービス創出に日本国内で取り組む。北米では高度純正整備「PREISM(プレイズム)」やEV(電気自動車)の導入をサポートするトータルソリューションプログラム「EVision」を展開。2028年までに、北米以外の主要地域にも対象エリアを拡大する。
カーボンニュートラルでは、さまざまなパートナーとの協業を通じて全方位(マルチパスウェイ)で取り組む。2030年までに全てのカテゴリーにカーボンニュートラル商品をラインアップに加える。さらに、2030年代の普及期に向けたEVの価格競争力向上や、バッテリー交換式ソリューションをはじめとする周辺事業の展開を本格的に推進する。
地域ごとの戦略は
CV事業は、販売/サービスチャネルや商品をいすゞ自動車とUDトラックスで相互補完し、シナジー創出を加速し、グローバルで拡販する。LCV事業はグローバルサウス向けの販売を拡大。2030年に向けて、動力源の多様化や次世代モデルに向けた要素技術の開発を推進する。
いすゞグループが重点地域と位置付ける日本と米国、ASEANはサプライチェーン全体とモノづくり強化への投資を継続する。今後の成長を見込む戦略地域となるインドやアフリカでは、将来に向けたブランドの浸透とプレゼンス拡大に取り組む。
日本では、グローバルの生産量を確保するためサプライチェーンの強靭化を図る。既存のインフラをベースに生成AI(人工知能)の活用などで効率化や近代化を進め、労働人口の減少に備えた最適なモノづくり体制を再構築する。新車販売や保有の事業拡大に向けてはサービスインフラ網強化のため2050億円を投資し、既存事業の盤石化を目指す。
物流2024年問題に対しては、ドライバーの拘束時間や積載率の実態に基づいて荷主として運営を改善し、ドライバーの負荷を軽減する。また、自動運転技術を活用した実証や事業の展開によって、日本の物流や人流を支えるとしている。
米国は、海外のEVビジネス構築の先駆けとして小型EVを投入する。開発や購買機能の強化、生産能力の増強のための積極的な投資も行う。アフター重視のビジネスモデルに転換し、LCF(Low Cab Forward Trucks)市場のマーケットリーダーを目指す。
人的資本経営の実現に向けて、グローバル基準の人材マネジメント基盤を整備する。第1弾として、従来の職能型ではなく職務型を採用した新たな人事制度を2024年春から開始する。2026年度にはグループ全体で運用する。全従業員の基礎〜専門領域のスキル向上や、技術革新に対応した技術の獲得も支援する。専門人材の獲得とリソースシフトを促進し、デジタルトランスフォーメーション(DX)における人材基盤を構築する。
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