富士経済は2023年9月21日、燃料電池のグローバル市場調査の結果を発表した。乗用車タイプの燃料電池車(FCV)の市場規模は2040年に2022年度比130.3倍の10兆8580億円に拡大すると見込んでおり、商用車タイプのFCVは同34.2倍の2兆8289億円と予測する。
FCVだけでなく発電/充電設備など向けも含めた燃料電池システムの市場規模は、2040年度に2022年度比45.2倍となる18兆2320億円に拡大する見通しだ。
乗用車タイプのFCVの市場をけん引するのは中国や韓国を含むアジアで、2040年の市場見通し10兆8580億円のうち、4兆870億円がアジア向けとなる。短期的には水素ステーションの普及がFCV市場のカギを握る。水素ステーションの建築規制の見直しの他、商用車タイプのFCVが先行して普及し、水素ステーションの整備が進むことで、乗用車タイプのFCVの市場を後押しするという。
今後は自動車メーカーが燃料電池モジュールを他の自動車メーカーや船舶、航空機など他のモビリティのメーカーに販売する動きが活発化し、FCVの製造コストが低減される。
トラックやバスなど商用車タイプのFCVは北米で大きく伸びる。商用車タイプのFCVの市場予測である2兆8289億円のうち4060億円が北米向けで、2022年度比では96.7倍の増加となる。商用車タイプのFCVは水素の需要量が多く、走行ルートが決まっていることから普及が進みやすいとしている。EV(電気自動車)と比べて走行可能距離が長く、水素の充填(じゅうてん)にかかる時間が短いこともメリットとされている。
現状では、車両や燃料価格の高さ、水素ステーションの整備不足などの課題があり、商用車タイプのFCVのユーザーとなる物流事業者などの負担が大きい。今後は、ディーゼル車の規制やユーザー企業へのインセンティブ強化など、北米で実施されているような官民一体の施策を背景に市場が拡大すると見込む。大型商用車のFCVは2020年代後半から量産が本格化するとしている。
燃料電池スタックのうち、大きな成長が見込まれるのはモビリティで採用が進むPEFC(固体分子形)だ。PEFCは発電効率の高さや作動温度の低さ、小型軽量にできることなどがメリットだとしている。一方、産業用で採用されるSOFC(固体酸化物形)は高価な白金触媒が不要で発電効率が高いが、製造コストが高止まりしているという。代替材料の検討や生産委託、用途拡大によるコスト低減が進められている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 燃料電池車は2030年から拡販フェーズ、水素エンジンは直噴がベター?
水素に対する自動車メーカーの関心が高まっている。過去に先行したのは乗用車のFCVだったが、現在関心を寄せられているのは商用車だ。 - 手に乗るサイズの燃料電池を開発中、小型モビリティの電源も視野
トヨタ紡織は「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」において、燃料電池を使ったモバイルバッテリーを展示した。 - 水素を手軽なエネルギーに、トヨタがポータブルカートリッジと周辺機器を開発中
トヨタ自動車は「第13回国際スマートグリッドEXPO」において、ポータブル水素カートリッジの周辺機器を披露した。 - 燃料電池を2030年に6万基、本格普及に向けたホンダのロードマップ
ホンダは水素事業拡大の戦略を発表した。乗用車の他、商用車、定置用電源、建設機械で燃料電池システムの活用を推進する。 - 二輪車メーカー4社で水素エンジンを共同研究、「内燃機関残したい」
カワサキモータース、スズキ、ホンダ、ヤマハ発動機は小型モビリティ向けの水素エンジンの基礎研究を行う「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合」を設立する。 - 水素エンジン搭載中型トラックがナンバー取得、2023年度内に実証
フラットフィールド、東京都市大学、トナミ運輸、北酸、早稲田大学アカデミックソリューションは水素エンジンを搭載した中型トラックを試作し、走行試験を開始した。