燃料電池車は2030年から拡販フェーズ、水素エンジンは直噴がベター?:脱炭素(1/2 ページ)
水素に対する自動車メーカーの関心が高まっている。過去に先行したのは乗用車のFCVだったが、現在関心を寄せられているのは商用車だ。
水素に対する自動車メーカーの関心が高まっている。過去に先行したのは乗用車のFCV(燃料電池車)だったが、現在関心を寄せられているのは商用車だ。
例えばホンダは2030年に6万基の燃料電池システムを販売する目標で、商用車への搭載と定置用電源での活用が需要をけん引すると見込む。乗用車でのFCVのシェアは極小と言い切る。また、いすゞ自動車が2027年に導入予定の燃料電池トラックは、ホンダが開発と供給で協力する。
トヨタ自動車も、電動化戦略の中でFCVの量産は商用車を軸に進める方針を示した。国内自動車メーカーによる商用車連合のCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)でも、商用車のFCV化を進める。
日系だけでなく、ダイムラートラックも水素活用に取り組む。三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合に当たって、トヨタ自動車も参加する4社の体制を生かして水素活用の促進に力を入れる。
こうした中、ボッシュ(Robert Bosch)は燃料電池システムと水素エンジンの両方に力を入れる。
燃料電池車は2030年から拡販フェーズ
ボッシュは2030年にEV(電気自動車)が新車の42%を占めると予測する。地域別に見ると欧州と中国でEVシフトが加速しており、2030年のEV比率が50%を超える可能性もある。一方、日本はHEVの比率が高くなる見通しで、多様なパワートレインに対応することが重要だとしている。
乗用車の主役の1つはEVになりそうだが、商用車のメインターゲットはFCVだ。特に、長距離走行や輸送の重量が大きくなるトラックでFCVが向いているという。ボッシュは2030年にFCVが拡販フェーズに入ると見込んでいる。グリーン水素の流通やFCVのコスト低減、水素ステーションの整備など、FCVの普及に必要な条件がそろうためだ。
例えば、欧州では2030年までに2000万トンのグリーン水素が確保される見通しだ。また、既存の天然ガスのパイプラインを活用して、従来と同じように水素を流通できるか検討されている。水素ステーションに関しては、2030年に北米で900カ所、欧州で1000カ所、中国で5000カ所に増える計画だ。
ボッシュは2018年に燃料電池のコンポーネント開発を開始し、セルとスタックの特許も取得した。2020年にはシステムの開発も始めている。
燃料電池のスタックやシステムだけでなく、タンクバルブ、圧力レギュレーター、水素インジェクター、昇圧コンバーターなどコンポーネント単体からシステムレベルまでカバーする。
商用車メーカーとの協業も進んでおり、中国では現地商用車メーカーとの合弁会社で燃料電池システムの開発と供給が行われているという。
北米や中国では、ボッシュはFCVの商用車でテスト走行も行っている。FCVの実走行からリモートでデータを収集し、ロバスト性の向上や燃料電池システムの最適化に活用している。日本でも、燃料電池システムのアプリケーション開発に対応している。
2021年はボッシュの燃料電池システムを搭載したトラックは77台だったが、2022年には570台、2023年末には量産も含めて3900台、2025年には4万3000台と拡大を見込んでいる。商用車向けのFCVのコンポーネントや燃料電池スタック、パワーモジュールなどの量産は2023年末までにスタートする。
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