トヨタのFCV「MIRAI」や「クラウン」で採用された燃料電池用触媒担体:材料技術
日鉄ケミカル&マテリアルは「H2&FC EXPO[春]2024〜第21回[国際]水素・燃料電池展[春]〜」で、燃料電池用触媒担体「ESCARBON MCND」を披露した。
日鉄ケミカル&マテリアルは「第23回 SMART ENERGY WEEK【春】」(東京ビッグサイト、2024年2月28日〜3月1日)内の「H2&FC EXPO[春]2024〜第21回[国際]水素・燃料電池展[春]〜」に出展し、燃料電池用触媒担体「ESCARBON MCND」を披露した。
触媒活性と触媒耐久性を両立
ESCARBON MCNDは、銀アセチリドを前駆体としたデンドライト(樹状)構造で、数層のグラフェンシートで仕切られた細孔を持つ。主な細孔は直径数nmのメソ孔(ミクロ孔とマクロ孔の中間)となっている。ESCARBON MCNDのメソ孔の内部に設置された白金触媒は高い触媒活性を発揮するため、少ない白金量で高い燃料電池性能を得られる。
同社の説明員は「ESCARBON MCNDではメソ孔の内部と外部に白金触媒が設置される。このため、触媒粒子のバインダとして混錬されるアイオノマーでメソ孔外部の白金触媒は触媒被毒し活性しにくくなるが、メソ孔内部の白金触媒はアイオノマーに触れないため触媒被毒せず高い触媒活性を発揮する。そのため、メソ孔を持たない触媒担体であるカーボンブラックと比べて少ない白金触媒で求められるレベルの触媒活性を実現できる」と説明した。
同製品は特異な細孔構造で触媒の反応効率を高められる他、数層のグラフェンシートで構成されていることから耐酸化性に優れている。これらにより、触媒活性と触媒耐久性を両立し、触媒の使用量を大幅に減らせる。
ESCARBON MCNDの比表面積は1g当たり約1200m2、ミクロ孔容積は1g当たり0.2ml、メソ孔容積は1g当たり約0.9mlだ。なお、同社は、これまで培ってきた炭素材料の制御技術と独自開発の製造プロセスによりESCARBON MCNDの量産化に成功している。これらの利点が評価され、トヨタ自動車のFCV(燃料電池車)「MIRAI」やFCV仕様の新型「クラウン セダンZ」で採用されている。
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