日本製鉄が4900億円の損失計上で高炉を追加休止、経営刷新に向けDX推進部も新設:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
日本製鉄が、2019年度の通期業績見通しで単独営業損益が1300億円の赤字(在庫評価差除く)となり、子会社も含めた減損などにより4900億円の損失を計上することを発表。厳しい経営環境に対応するため、日鉄日新製鋼の呉製鉄所の全設備の休止をはじめとする新たな生産設備構造対策と経営ソフト刷新施策について発表した。
日本製鉄は2020年2月7日、2019年度(2020年3月期)の通期業績見通しで単独営業損益が1300億円の赤字(在庫評価差除く)となり、子会社も含めた減損などにより4900億円の損失を計上することを発表した。併せて、この厳しい経営環境に対応するため、日鉄日新製鋼の呉製鉄所の全設備の休止をはじめとする新たな生産設備構造対策と、経営体制のスリム化などの経営ソフト刷新施策について発表した。
同日発表した2019年度第3四半期までの決算は、売上高が前年同期比2.2%減の4兆4760億円、事業損益が同5426億円悪化の2793億円の赤字、当期損益が同5639億円悪化の3573億円の赤字となった。通期業績見通しも、売上高が5兆9000億円、事業損益が3100億円の赤字、当期損益が4400億円の赤字と厳しい状況に陥っている。理由としては「米中貿易摩擦に端を発する製造業向け鉄鋼需要の減退、価格の低迷と、中国鉄鋼ミルの国内インフラ向け増産に由来する原燃料価格の高止まりが同時に発生するという過去に例を見ない状況に直面した」(リリース文より抜粋)ことを挙げている。
また中長期的には、国内市場が高齢化・人口減少による建設需要の縮小やユーザーの海外現地生産拡大などに伴う需要の減少が見込んでおり、海外市場でも競合激化を想定している。その一方で、日本製鉄グループは、主力製鉄所が建設から50年程度経過しており、今後は現状の生産能力を維持するために大規模な老朽更新投資が必要な時期を迎えつつあるという。これらの厳しい環境条件を見据えて、新たな生産設備構造対策と経営ソフト刷新施策の実施を決めた。
新たな生産設備構造対策では「鉄源一貫生産に関する競争力強化」「製品製造工程に関する競争力強化」「既発表案件の一部前倒しおよび変更」に分かれている。
「鉄源一貫生産に関する競争力強化」では、鉄源(高炉、焼結、製鋼)一貫生産での競争力を高める観点から、各製鉄所の一貫生産・出荷能力、コスト競争力、商品力などの競争力を総合的に勘案し、日鉄日新製鋼 呉製鉄所の全設備と、和歌山製鉄所第1高炉と関連設備を休止する。呉製鉄所の休止時期は、鉄源設備が2021年度上期末、残り設備が2023年度上期末。和歌山製鉄所第1高炉と関連設備については2022年度上期末までに休止する。
「製品製造工程に関する競争力強化」は、厚板事業体質強化、薄板生産体制効率化、チタン丸棒・溶接管事業からの撤退、ステンレス事業体質強化から成り、いずれもラインの休止と生産集約が中核施策となっている。厚板事業体質強化では、名古屋製鉄所の厚板ラインを2022年度下期をめどに休止し、鹿島、君津および大分製鉄所の厚板ラインに生産を集約する。薄板生産体制効率化では、日鉄日新製鋼 堺製造所の電気亜鉛めっきライン、連続焼鈍ライン、No.1 溶融アルミめっきラインの3ラインを2020年度末をめどに休止し、君津、名古屋などのラインに生産を集約する。チタン丸棒・溶接管事業は、事業環境および収益状況を勘案し撤退を決めた。製鋼所のチタン丸棒製造専用設備は2022年度末、大分製鉄所(光地区)のチタン溶接管製造ラインは2021年度上期末をめどに休止する。ステンレス事業体質強化では、日鉄ステンレス 衣浦製造所の熱延工場を2020年12月末、同製造所の精密品製造専用設備を2020年度上期末をめどに休止する。熱延工場の機能は日本製鉄に、精密品製造専用設備の機能は山口製造所などに集約する。
「既発表案件の一部前倒しおよび変更」では、広畑製鉄所のブリキ製造ラインの休止時期を2021年度下期から2020年度末に、八幡製鉄所(小倉地区)の鉄源(高炉、製鋼)設備の休止時期を2020年度下期から2020年度上期末に前倒しする。一方、日鉄スチールの製鋼設備は、2019年度末をめどに休止する予定だったが、稼働を継続することとなった。
これらの新たな施策を含めた生産設備構造対策の結果として、高炉基数は15基から11基となり、粗鋼生産能力は年間約500万トン削減される(2018年度実績は年間4784万トン)。設備休止による直接的な収益改善効果は約1000億円を見込む。さらに、製鉄所統合によるシナジー効果、合理化による労働生産性向上、変動費改善などの効果を積み上げていく考えだ。
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