DICが液晶事業から撤退、世界初の液晶電卓向けから始まった50年の歴史に幕:製造マネジメントニュース
DICは2024年12月末までに液晶材料事業から撤退すると発表した。生産拠点となっている埼玉工場の一部と中国の青島にある子会社の一部も閉鎖する。併せて、同事業に関連して保有する知的財産を中国のSlichemに譲渡することも決定した。
DICは2024年3月25日、同年12月末までに液晶材料事業から撤退すると発表した。生産拠点となっている埼玉工場(埼玉県伊奈町)の一部と中国の青島にある子会社の一部も閉鎖する。併せて、同事業に関連して保有する知的財産を中国のSlichemに譲渡することも決定した。生産拠点の閉鎖をはじめとする事業撤退で発生する費用は、Slichemへの知的財産の譲渡益と合わせて現在精査中としている。
DICの液晶材料事業は、スマートフォンやテレビなどで広く用いられている液晶ディスプレイのTFT(Thin Film Transistor)駆動ディスプレイ用の液晶材料(TFT液晶)が主力製品だ。この他、より駆動方式がシンプルなパッシブ駆動ディスプレイ用の液晶材料も手掛けている。1973年にシャープが開発した世界初の液晶表示電卓での採用を皮切りに、50年以上の歴史を積み重ねてきた。
しかし、近年は海外メーカーとの競争激化など事業環境が悪化しており、2022年2月発表の長期経営計画「DIC Vision 2030」では、TFT液晶を「構造改革事業」と位置付けるなど、抜本的な事業価値向上策の検討を進めていた。調光ガラスやLiDAR、5G/6Gなどの電波制御材料への展開に向けた技術開発を進めるなどさまざまな策を検討してきたが、厳しい事業環境が続く中で事業継続は困難と判断し撤退を決定したという。また、2023年の通期業績において、液晶材料事業が所属するカラー&ディスプレイセグメントの業績が減収減益で赤字に陥っており、黒字化に向けて収益性の向上が急務となっていた。
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