車載用電池のプライムアースEVエナジーがトヨタの完全子会社に:電動化
トヨタ自動車はプライムアースEVエナジーを完全子会社化する。PEVEに共同出資するパナソニックホールディングスと合意しており、2024年3月下旬に完全子会社化する予定だ。車載用バッテリーの量産体制強化につなげる。
トヨタ自動車は2024年3月5日、プライムアースEVエナジー(PEVE)を完全子会社化すると発表した。PEVEに共同出資するパナソニックホールディングスと合意しており、同年3月下旬に完全子会社化する予定だ。車載用バッテリーの量産体制強化につなげる。
PEVEではハイブリッド車(HEV)用の電池を生産している。今後はEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)のバッテリーも生産する計画で、多様な車載用バッテリーを生産することで電池の需要拡大に柔軟に応えられるようにする。また量産の競争力もさらに高められるとしている。
PEVEは1996年に当時の松下グループと共同出資で設立した(当初の社名はパナソニックEVエナジー)。出資比率はトヨタ自動車が40%、松下グループが60%だったが、2005年にHEV市場の拡大に伴いトヨタ単独で増資。出資比率はトヨタ自動車が60%、松下グループが40%となった。2010年には現在の社名であるプライムアースEVエナジーに変更するとともに、トヨタ自動車の出資比率が80.5%に増加した(パナソニックホールディングスが19.5%)。完全子会社化後の社名変更を検討しているという。
現在、トヨタグループではプライムプラネットエナジー&ソリューションズがEVとPHEV、HEV用の電池を、豊田自動織機がバイポーラ型ニッケル水素電池などHEV用の電池を手掛けている(プライムプラネットエナジー&ソリューションズの出資比率はトヨタ自動車が51%、パナソニックホールディングスが49%)。
次世代電池の開発についても、この2社の役割が大きく、プライムプラネットエナジー&ソリューションズがパフォーマンス重視の角形電池を、豊田自動織機とトヨタグループが普及型の次世代電池(バイポーラ型やLFP系正極を採用)やハイパフォーマンス型の電池、EV用の全固体電池を開発する体制だ。
現行 | 次世代電池 | 次世代電池の さらなる進化 |
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---|---|---|---|---|
bZ4Xに搭載 | パフォーマンス版 | 普及版 | ハイパフォーマンス版 | |
形状 | 角形 | 角形 | 新構造 | 新構造 |
構造 | モノポーラ | モノポーラ | バイポーラ | バイポーラ |
正極材 | NCM系 | NCM系 | LFP系 | Ni系 |
ラインオフ時期 | 2022年 | 2026年 | 2026〜2027年の 実用化 |
2027〜2028年の 実用化 |
1回の充電での走行距離 | 615km | bZ4X比200%(A) | bZ4X比20%増 | (A)から10%増 |
コスト | - | bZ4X比20%減(B) | bZ4X比40%減 | (B)から10%減 |
10〜80%の急速充電 | 30分 | 20分 | 30分 | 20分 |
今後の開発担当 | - | プライムプラネットエナジー&ソリューションズ | 豊田自動織機と トヨタグループ |
豊田自動織機と トヨタグループ |
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