トヨタとパナソニック、目指す街づくりは「不便な立地の高付加価値化」:製造業IoT
トヨタ自動車とパナソニックは2019年5月9日、東京都内で会見を開き、住宅や都市開発を手がける共同出資会社を新設すると発表した。社名は「プライムライフテクノロジーズ」で、両社が同等の出資比率で設立する。トヨタ自動車とパナソニックが傘下に持つ住宅関連会社の株式は、プライムライフテクノロジーズに移管させる。
トヨタ自動車とパナソニックは2019年5月9日、東京都内で会見を開き、住宅や都市開発を手がける共同出資会社を新設すると発表した。社名は「プライムライフテクノロジーズ」で、両社が同等の出資比率で設立する。トヨタ自動車とパナソニックが傘下に持つ住宅関連会社の株式は、プライムライフテクノロジーズに移管させる。
新築住宅の着工数が今後大きく減少する中で、住宅事業を統合することで事業基盤を強化する狙いだ。また、トヨタ自動車のモビリティサービス、パナソニックが持つ暮らしや住まいの情報を統合処理する「HomeX」を都市開発に生かすことで、町全体での新たな暮らしの価値を創出することを目指す。
プライムライフテクノロジーズの資本金額は未定。2019年は法的手続きや、新会社設立準備委員会での協業検討に充て、2020年1月の設立を予定している。同社の代表取締役社長は、パナソニック ライフソリューションズ社 社長である北野亮氏が務める。なお、プライムライフテクノロジーズはパナソニックとトヨタ自動車の連結の範囲外となる見込みだ。
プライムライフテクノロジーズは、トヨタホームとミサワホーム、パナソニックホームズ、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の株式を引き受ける。パナソニックは、パナソニック建設エンジニアリングの一部事業はパナソニックの他の子会社に吸収分割させた上で、3社の株式全てを移管。トヨタ自動車は、トヨタホームを完全子会社化するとともに、トヨタホームを通じて三角株式交換によってミサワホームの全株式を取得し、新会社に移管する。
新会社は、住宅、建設、街づくりの3つの事業を推進する。住宅事業は、トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックホームズの3ブランドを残し、それぞれが持つエリアごとの営業の強みを生かしながら、調達や設計、製造、物流、営業サポートなどのバックヤード機能を一本化する。建設事業でも、メーカーのノウハウを活用した省人化や自動化により競争力を高める。これにより、2030年に6割に減るといわれる新築住宅の着工数の減少に備える。
街づくり事業で目指すのは、住宅地に不向きな立地で競争力の低い土地を、パナソニックのHomeXや、トヨタ自動車のモビリティサービスプラットフォームを取り入れながら、マネジメントやサービスの高度化によって高付加価値化することだ。移動に不便な立地でモビリティサービスを取り入れることで、生活の快適性や利便性を高める。新たに開発された街であれば、無人運転車を含め自動運転車を走らせる環境も整えやすい。
トヨタ自動車のモビリティサービスの取り組みが最も生かされそうな街づくり事業だが、具体的な提案には言及しなかった。街づくりにおける自動運転車やMaaS(Mobility-as-a- Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の導入は「都市開発と連携して進める」(トヨタ自動車 執行役員の白柳正義氏)という説明にとどめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “暮らしのiOS”か? パナソニックの新たな暮らし基盤「HomeX」デビュー
パナソニックは2018年10月30日、同社の100周年を記念して行う初めての全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」を開催。その場で報道陣に向けて、家電や住宅設備、住宅などを再定義する、人間中心の暮らし統合プラットフォーム「HomeX」を披露した。 - パナソニック「HomeX」が示す、これからの製造業が生きる道
パナソニックは100周年を記念して開催した初の全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)を開催。本稿では「HomeX」について説明したパナソニック ビジネスイノベーション本部長の馬場渉氏の講演内容を紹介する。 - 「MaaSは新車販売に劇的なマイナス影響なし」、トヨタ友山氏が語る戦略
トヨタ自動車は2019年2月6日、東京都内で会見を開き、2019年3月期第3四半期(2018年度4〜12月期)の連結決算を発表した。 - MaaSは鉄道など公共交通や都市計画にどのような影響を及ぼすか
フィンランド発で、モビリティのサービス化を示す「MaaS(Mobility as a Service)」という一大ムーブメントが起こってきた。公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどを組み合わせて、人の移動をシームレスに行うサービスを示す言葉だ。では今後、MaaSが普及すると、モビリティやサービス変革のみならず、都市交通や都市計画にどのような影響を及ぼすのだろうか。関係者にヒアリングを行った。 - MaaSを深掘り、新しい街づくりを起点にモビリティと都市交通の在り方を考える
前回に引き続きMaaS第2弾となる本連載。公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどを組み合わせて、人の移動をシームレスに行うサービス、「MaaS(Mobility as a Service)」という言葉が日本でも話題となっている。では、MaaSが普及すると、モビリティと街づくりの関係はどう変わるのであろうか。今回は先進的な検討を進めている関係者に話を聞いた。 - CASEはMaaSではない、MaaS実現のための5つの要件
MaaSの発祥地であるフィンランドを訪れ、政府や関連企業にインタビューを敢行した。さらに、デンマークのコペンハーゲンで開催された第25回ITS世界会議にも参加して、MaaSとは何かを突き止めようとした。このコラムは、現時点では漠然としたMaaSという概念に対して、筆者なりに足で稼ぎ、要件としてまとめたものである。