電池産業の参入障壁は意外と低い!? 今ある製造技術が生きる可能性も:電動化(1/2 ページ)
日本の電池産業が新規参入を求めている。プレイヤー増加を求めているのは、製造装置だ。
日本の電池産業が新規参入を求めている。自動車業界はもちろん、政府もリチウムイオン電池の安定供給と生産拡大に注力しているが、これに向けて鉱物資源、電池材料、セル、パックなどそれぞれに課題がある。課題の1つであり、電池産業が新規参入によるプレイヤー増加を求めているのは、製造装置だ。
現状では電池セルメーカーが生産拠点を増やそうにも製造装置の取り合いになっており、今後の需要拡大でさらに調達が難しくなる可能性が高い。また、既存の製造装置メーカーは企業規模が大きいとはいえないため、既存の製造装置メーカーが事業を拡大するだけでなく、新規参入によるプレイヤー増加によって製造装置が産業として活性化し、成長することが、リチウムイオン電池のサプライチェーンを支える基盤にもなるという。
電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain、BASC)の執行理事を務める森島龍太氏(プライムプラネットエナジー&ソリューションズ 経営戦略本部 専任部長)は、「リチウムイオン電池は20倍にも市場が伸びるといわれているが、1社だけ、あるいは決まったメンバーだけでこれだけ伸びていくのは難しい。新しい仲間と一緒にビジネスチャンスをつかみたい」と語る。
森島氏は「エンジンなどメカに比べて電池は取っつきにくい印象がとても強いかもしれないが、電池の原料の混練、塗工、圧縮、乾燥、セルの組み立てといった製造工程はメカ的なところに落とし込まれる。電池とかかわりのなかったモノづくりの企業でも、電池の製造工程のどこかが自社でやってきた領域と重なるのではないか」と、参入しやすさに言及する。電動化で需要が減少する自動車部品のサプライヤーが、これまでの強みを生かして電池の製造設備を新規事業にしていける可能性もある。
リチウムイオン電池そのものだけでなく、製造設備も成長市場だ。市場規模は2022年で110億ドル(約1.6兆円)、今後は年率10%で成長して2030年には260億ドル(約3.8兆円)に拡大すると予測されている。足元では中国が圧倒的なシェアを握り、韓国がそれに続く。米中経済で対立やデカップリング(分離、切り離し)が進めば中国以外のシェアが高まる見込みで、日本にもビジネス拡大のチャンスがある。
自社のコア技術の生かし方を探して
電池サプライチェーン協議会は2021年4月に発足した。持続可能な電池のエコシステムの構築など、日本国内の電池のサプライチェーンに関わる課題を解決するための業界横断的な団体が必要だという考えで設立が決まった。国内外での官民連携や政策提言に加えて、電池の競争力向上やグリーン化に向けたさまざまなタスクフォースが活動中だ。
当初の会員企業は28社だったが、現在は151社まで拡大した。電池の部品や材料、電池セルの製造に携わる企業の他、資源調達の商社などが参加している。また、タスクフォースでテーマ設定が広がるのに合わせて、ITや金融、保険などの業界からも会員が増え始めている。
会員拡大や電池産業への新規参入促進に向けて、電池サプライチェーン協議会は2023年9月12〜13日、東京都内で「バッテリーカレッジ」を開催。自動車部品の他、印刷、機械加工、樹脂などさまざまな業種から25社が参加した。バッテリーカレッジの参加対象は、電池産業への新規参入や事業拡大を検討する企業だ。そもそもリチウムイオン電池とはどんなものなのか、なぜ電池が必要とされているのか、自動車産業にとっての電池、電池産業の戦い方など基本的なところから解説した。
バッテリーカレッジは、新規参入を考えている企業に電池製造で自社のコア技術が生かせる領域を見つけてもらう狙いもある。今回も電池メーカーが講師として登壇し、「これまでは隠してきた」(電池サプライチェーン協議会の森島氏)という電池づくりを詳細に紹介した。中韓の電池産業が情報をオープンにしながら技術力を高めてきたことも踏まえている。
バッテリーカレッジは2023年6月に大阪でスタートして今回が2回目。今後は九州や名古屋で開催予定で、東北での開催も検討中だ。
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