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電池産業の参入障壁は意外と低い!? 今ある製造技術が生きる可能性も電動化(2/2 ページ)

日本の電池産業が新規参入を求めている。プレイヤー増加を求めているのは、製造装置だ。

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過去の負けパターンを断ち切る

 リチウムイオン電池は、自動車の電動化やバッテリー搭載量の多いEV(電気自動車)の普及により、需要が今後急拡大する見通しだ。これに合わせて、電池メーカーや自動車メーカーが投資を積極化している。

 2022年12月には、経済安全保障推進法において蓄電池など11の製品が特定重要物資として指定された。特定重要物資とは「国民の生存に必要不可欠、または広く国民生活や経済活動が依拠している重要な物資」を指す。安定供給に取り組む民間企業を支援するなど、政府もサプライチェーンの強靭(きょうじん)化を重視している。

 政府の蓄電池産業戦略検討官民協議会では、自動車の安定した製造基盤を国内に確保するため、2030年までに国内では足元の7倍以上となる年間150GWhのリチウムイオン電池の生産能力を確立する目標を掲げた。また、グローバル市場での資源購買力確保や国際的なルール形成への影響力を確保するため、日系企業全体がグローバルで600GWhの製造能力を確保することを目指す。

 電池サプライチェーン協議会の森島氏は、「半導体や液晶ディスプレイなどでの過去の負けパターンを電池では断ち切りたい」とバッテリーカレッジで訴えた。これまでは、新技術で世界に先駆けるものの、国内市場の小ささや政府の補助金の少なさなどから成長投資の意思決定が遅れ、シェアやビジネスの縮小を招いてきたと指摘。企業が成長の機会を逃すことで税収や雇用が失われ、国力の低下や人材の海外流出にもつながってきたという。

 一方、米中欧の“勝ちパターン”は、政府による手厚い補助や市場形成を背景に積極的な投資を展開し、トップシェアを獲得してきたことにある。グローバルでも競争力が高まり、雇用や産業の裾野の拡大、国際的なルールメークによる新たな競争力向上にもつながる。リチウムイオン電池の量の拡大が加速する今が、負けパターンを断ち切る最後のチャンスであるという。

政府も投資を

 ただ、電池は売上高に対する先行投資の比率が他の産業と比べて大きい。自動車が1割、液晶が2割、半導体が3割なのに対し、電池は4割と試算される。「1000億円の売り上げに対して、先に400億円を投資する必要があるということだ」(森島氏)。さらに、プロジェクト開始から生産準備完了までのリードタイムも長いため、投資回収フェーズまで耐える体力も必要だ。

 電池サプライチェーン協議会での調査によると、日本は米中に比べて政府投資の規模が小さく、民間の投資負担が大きい。国内で年間150GWhの生産能力を確保するには新たにトータルで3.4兆円の投資が必要で、このうち2.3兆円が政府の投資であれば、民間の負担が米中並みになるという。

 電池のサプライチェーンに関わる企業が一体となって意見をまとめ、政策を作っていくことも電池サプライチェーン協議会の役割だ。

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