EVシフトの伸び悩み期間「プラトー現象」を乗り越えるには:和田憲一郎の電動化新時代!(50)(3/3 ページ)
2024年に入り、EVシフトに関して、ネガティブなニュースも数多く見られるようになってきた。ニュースに一喜一憂する訳ではないが、これまで急激なEVシフトに対して、やや揺り戻しが起きているのではと感じる。
(2)日本全体を網羅した総合的な充電インフラ計画
充電インフラに関しては、政府は2030年に急速充電器3万基、普通充電器12万基、合計15万基の設置目標を掲げ、補助金を出してきた。しかし、今後EV/PHEVの普及が拡大すると、少なくとも公共の場所については、どの場所にどのような急速充電器をいつまでに設置するのか、日本全体を網羅した総合的な充電インフラ計画が必要ではないだろうか。さらには、高速道路の大雪対策として、緊急避難場所や充電スタンドの追加場所を設ける必要があるだろう。ガソリン車が大多数の時代に設定された各種設置基準に対して、EV時代に対応した見直しが必要ではないだろうか。
(3)冷暖房に関する総合的な評価
EVの場合、暖房を入れるとバッテリーからのエネルギーを使用するため走行距離が短くなる。しかし、どれくらい短くなるのかは不透明のため不安を抱くユーザーは多い。そうであれば、市販されている国産車だけでなく輸入車も含めて、一定の条件で寒冷地試験を実施し、その結果を公表してはどうだろうか。これまで中国でも実施されているが、これはユーザーに事前情報を与えるとともに、自動車メーカーにとっても技術革新を促す。
(4)コンシェルジュ的な相談窓口
EV/PHEVに関しては、漠然とした不安を感じている方も多い。充電サービスに対しても、トラブル時への懸念を感じている方もいるだろう。これらの解消のためには、問い合わせ窓口の設置など、コンシェルジュ的な相談窓口の設置などが望ましいのではないだろうか。
今後の対応は
今回、EVシフトのプラトー現象について述べてきたが、筆者は約2年で終わると推定している。その後は、多くの環境規制が実施されることから、よほどの環境変化がない限り、成長期から成熟期へと伸展していくだろう。そう考えると、現在の拮抗している状況で様子見をすることは、タイミングを逸することにつながる。出遅れている日本の自動車産業関係者にとって、プラトー現象は絶好の挽回のチャンスとなるのではないだろうか。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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