自動車部品産業にこれから起こる5つの潮流:和田憲一郎の電動化新時代!(41)(1/4 ページ)
ほぼ1週間に2〜3度の割合でEVに関連するニュースが流れている。ここ1年で10年分に相当する情報量が発信されている印象だ。このように激流が押し寄せる中、エンジン車からEV(電気自動車)に向かうことで、自動車部品産業も危機に直面するのであろうか? 今後起こり得る潮流を見据え、どう考え、対応していくことが望ましいのか、筆者の考えを述べたい。
ほぼ1週間に2〜3度の割合でEVに関連するニュースが流れている。ここ1年で10年分に相当する情報量が発信されている印象だ。このように激流が押し寄せる中、エンジン車からEV(電気自動車)に向かうことで、自動車部品産業も危機に直面するのであろうか? 今後起こり得る潮流を見据え、どう考え、対応していくことが望ましいのか、筆者の考えを述べたい。
潮流1 規制強化と勢い増す海外自動車メーカー
2021年はある意味、規制の年である。前回の記事で、欧州各国を追いかけるように日本の政府や東京都が脱ガソリン車を目指して規制強化を強めていることを報告した。このような動向はまるでシンクロニシティーであり、どこかがガソリン車廃止を5年早めると発表すると、まるでそれに呼応するかのように、あるいはそれに負けじと、他の国や自治体も時期を早めてしまう。
では実際のEVやプラグインハイブリッド車(以下PHEV)の販売についてどうかといえば、2020年は欧州が前年比2.4倍の133万台、中国の新エネルギー車(EV、PHEV、FCV=燃料電池車)は10.9%増の137万台で、ほぼ並んだと日本経済新聞などで報じられている。欧州は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で各都市がロックダウンしており、全体の販売台数が大きく落ち込んでいる中で中国とほぼ肩を並べたことは驚きである。現在のEVとPHEVのマーケットリーダーは、欧州と中国であると言っても過言ではない。
一方、これまでのリーダーであった中国では、廉価なEVが大ヒット中だ。売れているのは上汽通用五菱汽車(General Motors=GM、上海汽車、五菱集団の合弁会社)が発売した「宏光(hong guang)MINI EV」で、最安値で約43万円、170km走れる「長距離」モデルでも約60万円で販売された。シェアサイクル競争でも思い出すが、中国では何か1つでもヒットすると、我も我も、と類似のビジネスを開始することがある。今回も、テスラ「モデル3」では無理でも、「宏光MINI EV」ならマネできると思った企業が多いのではないだろうか。筆者が推定するに、2021年はミニEV(超小型EV)の分野に10社以上が参入し、総計100万台規模のジャンルになるのではないかと思われる。
一方、どちらかといえば静かだったのが米国勢だ。GMは2021年に入ってから、約60年振りにブランドロゴを大文字から小文字の「gm」に変更した。“m”の下側には下線を入れ、GMの電動化戦略の基礎をなすアルティウムプラットフォームをブランドロゴでも表している。GMは2025年までに270億ドルを投資し、全世界で30車種の新しいEVを発売する計画とのこと。不退転の決意のようである。
日系自動車メーカーは車種ラインアップを見直し中であるのかもしれないが、次々と手を打ってくる海外自動車メーカーに対してどちらかといえば静の構えである。筆者からみると、環境が激変する中で規制強化の動きに対してフォローしていくというよりも、前向きに立ち向かう姿勢が必要ではないかと思う。今回のテーマである自動車部品産業も、主軸を海外に向けないと出遅れてしまうことを危惧している。
ゼロエミッション車に関する各社の動き
潮流2 OTAによる部品メーカー再編の号砲
実は2つ目の潮流が自動車部品産業にとって最もインパクトがあるのではないか。無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)とは、無線通信でインターネットを介して、ユーザーが必要と判断したときにソフトウェアをアップデートする機能である。スマートフォンやPCにはアップデート機能があるが、これまで自動車では、更新の対象はナビゲーションシステムの地図情報などに限られていた。
OTAは、2012年にテスラが「モデルS」で実施し話題となったが、ここ何年かで、多くの自動車メーカーがOTA機能を採用すると宣言するようになった。それには理由がある。サイバーセキュリティと併せて、ソフトウェアアップデートの国際基準が定められたのだ。
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