自動車部品産業にこれから起こる5つの潮流:和田憲一郎の電動化新時代!(41)(2/4 ページ)
ほぼ1週間に2〜3度の割合でEVに関連するニュースが流れている。ここ1年で10年分に相当する情報量が発信されている印象だ。このように激流が押し寄せる中、エンジン車からEV(電気自動車)に向かうことで、自動車部品産業も危機に直面するのであろうか? 今後起こり得る潮流を見据え、どう考え、対応していくことが望ましいのか、筆者の考えを述べたい。
自動運転走行を向上させようとすると、外部からの通信が車内ネットワークにつながるため、サイバーセキュリティのリスクが増大する。このため、自動車メーカーや関係団体は、国際連合欧州経済委員会の下部組織「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」で議論を続けてきた。そして2020年6月に自動車へのサイバー攻撃対策を義務付ける国際基準(UN規則)を採択するとともに、ソフトウェアのアップデート要件についても採択した。
これを受けて、各国も対応に乗り出した。日本では、国土交通省が2020年12月末にサイバーセキュリティやソフトウェアアップデートの基準など国際基準を国内の保安基準に導入するための法令整備を行うと発表している。
先んじてOTAを導入したテスラからは、今後の動向が読みとれる。これまで多くの自動車メーカーもOTAを考えていたと思われるが、ECUの多さとアーキテクチャの複雑さがネックだったのではないか。従来のエンジン車ではECUが平均で60〜80個、多い車両では100個前後が搭載されているといわれている。ECUは機能部品ごとに分散しており、集中コントロールは難しかった。しかし、EVの場合、コンポーネントごとにまとまっており制御しやすいだけでなく、EV専用プラットフォームを開発するのに合わせてECUのアーキテクチャを刷新することもできる。
テスラのモデル3では、汎用ECUが3個、自動運転用1個で、合計4つのECUに統合されている。多くの自動車メーカーがいきなりテスラのように数個のECUによる構成に移行するのか、それまでの中間段階として自動運転など必要な機能のみ統合していくのか、各社判断が分かれると思われる。
いずれにしても、統合しようとすればするほど、これまで各機能部品に備わっていたECUは分離され、自動車メーカーがコントロールする統合ECU側に移っていく。これを第1世代と呼ぼう。テスラは既に実施しているレベルである。
では次に何が起こるのか。統合ECUは、当初の企画ではこれまでのECUの寄せ集めであったかもしれないが、次第に自動車メーカーの特色となるユニークな部分と、シートやドア、ランプ類の動作など標準化できる部分に分かれていくのではないだろうか。これは第2世代と呼べるだろう。サプライヤーは、利益の源泉であった機能部品のECUが取り上げられることから、単品商売になりかねない。その結果、単品同士での競争が激化し、結果として合従連衡が起きるのではないだろうか。
それがさらに進むと、自動車メーカーは多数の車種をOTAでコントロールすることから負荷が大きくなる。そのため、自動車メーカーはユニークな部分に集中し、統合ECUの標準化部分はアウトソーシングするだろう。これを筆者は第3世代と呼ぶ。この段階になれば、アウトソーシングされた企業は、自動車メーカーの了承を得て標準部分を外販することもできるかもしれない。また、機能部品そのものは、スケールメリットを背景にメガサプライヤーが競争力を持つ。このように、OTA導入が進むにつれ、部品メーカー再編にまで影響が及ぶと推察する。おそらく「第3世代」は2030年頃から始まるであろう。
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