三井化学が開発した“体温でなじむ素材”がダンスの動きを形にした衣装で採用:材料技術
三井化学は「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展し、人の体温を感知して、体になじむ素材シート「HUMOFIT」とその採用事例を披露した。
三井化学は「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2024年1月31日〜2月2日、東京ビッグサイト)に出展し、人の体温を感知して、体になじむ素材シート「HUMOFIT(ヒューモフィット)」とその採用事例を披露した。
形状記憶性や温度依存性を搭載
HUMOFITは、ガラス転移温度(ポリマーが劇的に軟化する温度)が約28℃のシート素材で、人の体温によりガラス転移温度を超えるため、体に触れてからすぐになじむ。加えて、持ち上げると自重で変形するほどしなやかで伸縮性もある他、応力で変形し一定時間その形状を保ってゆっくり元に戻るという形状記憶性がある。温度依存性もあり高温で柔らかく、低温で硬くなる。
用途としては、アパレル、シューズ、シート、バンド、サポーター、寝具、ヘルメット、ヘッドフォン、スポーツ製品が想定されている。
会場では、採用事例として、ワコールのブラジャー「ハグするブラ」、クロシェの靴「farfalle CLASSICAL mine#2」、トーキョーハットのキャップ、ネイスの知育玩具「キャンディ ぷらす」、デザイナーの大野舞子氏がファッションコンテスト「FASHION FRONTIER PROGRAM 2023」でファイナリストとなった作品を紹介した。
ハグするブラは、内蔵された部材「ハグシート」の素材にHUMOFITを利用している。ハグシートが体温で柔らかくなることで体にフィットしやすく、HUMOFITの形状記憶性により着くずれしにくい。
farfalle CLASSICAL mine#2では、インソールに導入したHUMOFITの特徴を生かせるように足と接する表皮を人口皮革とし接着方法も工夫している。これにより全体重がかかる足裏の沈み込みにもフィットするようになった。
トーキョーハットのキャップでは、HUMOFITを使用した百々製のスエットバンド「ThermoFlex」を採用している。HUMOFITを採用したThermoFlexは体温に合わせて柔らかくなるため対象者の頭部形状にフィットしやすく圧迫感がない。
キャンディ ぷらすは、HUMOFITを素材に用いた知育玩具で、体温で暖めると柔らかくなり、自由に曲げられ、キャンディ ぷらす同士をくっつけることも可能。三井化学の説明員は「HUMOFITは、衣類や帽子、靴などで採用される機会が多いが、キャンディ ぷらすのような知育玩具でも利用されている。これまでに活用されていない用途での採用を目的に今回は出展した」と述べた。
大野舞子氏の作品は生地の裏にアイロンでHUMOFITを接着することで人肌の温度により伸びるようにした衣装だ。大野氏は「この作品ではダンスの動きを目に見える形で残像として残すことを目指した。ダンスの動きを形にできる形状記憶性と人が着用した時に生地が伸びる特性を持つ素材を探していたところ、HUMOFITを見つけ、本作品で採用するに至った」と話す。
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