製品の新規用途発見数を倍に、三井化学がGPTとWatsonの組み合わせで実現:製造IT導入事例
三井化学は日本アイ・ビー・エムと共同で、「Azure OpenAI」とIBMのAI「Watson」を組み合わせて製品の新規用途探索を高精度化、高速化することに成功したと発表した。
三井化学は2023年9月13日、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と共同で、マイクロソフトが提供する生成AI(人工知能)サービス「Azure OpenAI」とIBMのAI「Watson」を組み合わせることで、製品の新規用途探索を高精度化、高速化することに成功したと発表した。
具体的には、三井化学固有の辞書作成数が約10倍に増加、明確に「用途」と記載のあるデータにおいては新規用途の抽出作業効率が3倍に向上、新規用途の発見数が約2倍へ増加、という3つの成果を実現した。
三井化学は新規用途探索において、ニュースやSNS、特許情報などのデータをAIで分析することで、製品の機能特性に関連したキーワードを軸に新用途を発見する取り組みを行っている。これによって、製品の売り上げやマーケットシェアの拡大を目指している。
今回、この新規用途探索において、Azure OpenAIを通じて大規模言語モデルの一種であるGPTを活用し、Watsonに組み合わせる試みを行った。三井化学固有の辞書を構築してビッグデータを分析するAI基盤としてWatsonを用い、ユーザーとの応答やデータの抽出、要約に加えて高速サーチを行う役割をGPTに担わせた。これによって、IBM Watsonによる新規用途探索の分析能力を向上させたという。
三井化学はGPT活用によって、3つの成果を創出したとしている。1つ目は4カ月間での辞書作成数が以前に比べて約10倍に増加したことだ。その理由として、GPTとの対話を通じて辞書が作成可能になり、さらに文脈を踏まえた高度な翻訳に基づく迅速な英訳辞書の作成が可能になったことが挙げられている。
2つ目は新規用途探索の用途抽出プロセスにおいて、GPTの抽出機能を活用することで、明確に「用途」と記載されているデータの約70%が自動抽出可能になったことだ。新規用途の候補となるキーワードを全て確認する手間が省ける上、新しいキーワードを効率的に発見できるようになった。これによって新規用途の抽出作業効率が3倍に向上したという。
3つ目は、新規用途発見数が約2倍に増加したことだ。辞書作成数の増加と新規用途探索の用途抽出プロセスの高速化によって、効率的かつ迅速に新規用途を発見することが可能になった。これにより、製品のさらなる用途拡大が期待される。
三井化学は生成AIを活用して、市場開発から製品開発までのスピードを加速させていくとしている。
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