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X線分光撮像衛星による銀河団や星雲のファーストライトの成功に貢献:宇宙開発
NECは、宇宙航空研究開発機構が発表した、X線分光撮像衛星「XRISM」のファーストライトの成功に貢献した。XRISMのバス機器の製造や衛星システム試験、射場における打ち上げ準備、打ち上げ後の初期運用支援を担当した。
NECは2024年1月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が発表した、X線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」のファーストライト(初期観測画像取得)の成功に貢献したことを発表した。
XRISMは、種子島宇宙センターから2023年9月7日に打上げられた衛星だ。銀河を吹き渡る風「高温プラズマ」の速度や化学組成を調べ、星や銀河、銀河の集団が作る大規模構造の成り立ちを調査することを目的としている。微弱なX線を検出するX線マイクロカロリメータを搭載した軟X線分光装置「Resolve」と、X線CCDカメラを搭載した軟X線撮像装置「Xtend」を装備している。
NECは、XRISMのバス機器の製造、衛星の全体インテグレーション、衛星システム試験、射場における打ち上げ準備、打ち上げ後の初期運用支援を担当した。ファーストライト観測運用では、銀河団Abell 2319と大マゼラン星雲にある超新星残骸N132Dの精細なX線スペクトルの取得に成功した。
これまでNECは、衛星システムメーカーとして多くの衛星開発に携わってきた。軌道上実績に基づくバス機器の提供、超高感度観測センサーの性能を引き出す衛星搭載環境の構築、観測天体のX線を捉える高精度ポインティング制御などの技術から、XRISMのX線分光撮像ミッションを支えている。
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