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人工衛星は輸出産業になれるか、NECが「ASNARO」に託した願い宇宙開発(1/4 ページ)

日本の人工衛星開発を支え続けてきたNECが、宇宙事業の拡大に向けて開発したのが小型衛星「ASNARO(アスナロ)」だ。同社は、ASNAROを皮切りに、宇宙事業の国内官需依存からの脱却だけでなく、宇宙ソリューションビジネスの立ち上げをも目指している。

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 日本初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられたのは1970年のことだ。おおすみの重さはわずか24kg。ロケットの第4段に送信機を付けた程度の簡素なものだったが、日本の衛星開発の歴史はここから始まった。

 当時、おおすみの製造を担当したのはNEC。おおすみ以降、同社は50年近く、日本の衛星を開発し続けており、実績はすでに70機を超えた(2001年に宇宙事業を統合した東芝の分も含む)。小惑星探査機「はやぶさ」が世界初の偉業を達成したのは記憶に新しいが、このはやぶさもそのうちの1機だ。

NECは日本初の人工衛星「おおすみ」を手掛けた
NECは日本初の人工衛星「おおすみ」を手掛けた(クリックで拡大)

 だが、官需依存から脱却できないことが、同社衛星ビジネスの大きな課題となっていた。国内の官需頼みでは、成長は期待できない。それどころか、現状維持への危機感すらあるだろう。

 衛星ビジネスを拡大するには、成長が期待される海外市場へ打って出るしかない。そのためのカードとして、経済産業省の支援も受けながら開発したのが、次世代型の小型観測衛星「ASNARO(アスナロ)」である。本記事では、このASNAROプロジェクトについて、注目してみたい。

「ASNARO-1」の軌道上イメージCG
「ASNARO-1」の軌道上イメージCG(クリックで拡大) 出典:NEC

「ASNARO」はどんな衛星?

 ASNAROシリーズには、光学衛星の「ASNARO-1」と、レーダー衛星の「ASNARO-2」がある。ASNARO-1は2014年11月、ロシアのドニエプルロケットで打ち上げられ、現在も軌道上で運用中。ASNARO-2は2017年11月12日に、日本のイプシロンロケット3号機で打ち上げられる予定で、同年8月、完成した衛星が報道向けに公開された。

NEC府中事業場で公開された小型レーダー衛星「ASNARO-2」
NEC府中事業場で公開された小型レーダー衛星「ASNARO-2」(クリックで拡大)

 光学衛星というのは、光学望遠鏡を使って地表の様子を観測する衛星のことだ。大きなデジタルカメラのようなもの、と考えてもらうと分かりやすいのだが、雲で覆われていたりすると、その下が見えないという弱点がある。

 一方レーダー衛星は、光ではなく電波を使う。地表に電波を出し、反射波を解析することで地表の様子を調べるため、雲があっても構わない。また、夜側でも昼側でも、同じように観測することが可能だ。

「ASNARO-2」の模型
「ASNARO-2」の模型。アンテナは軌道上でこのように展開する(クリックで拡大)

 地球観測衛星の性能を表す場合、代表的な指標は「分解能」である。これは、地表のどのくらい小さな物体まで写すことができるのかという数字で、これが小さいほど、細かく様子を見ることができる。分解能を向上させるには、より大きな望遠鏡やレーダーが必要になるため、衛星も大型化する傾向がある。

 一般的に、光学衛星は分解能に優れる。ASNARO-1は50cm以下で、ASNARO-2は1m以下だ。しかしレーダー衛星には、天候に左右されず観測できるという強みがある。それぞれの長所を生かすために、光学衛星とレーダー衛星はセットで運用されることが多い。2機のASNARO衛星が作られたのもそのためだ。

 ASNAROの開発コンセプトは、小型、低コスト、短納期、高性能。これを実現するためのキー技術が、同社初の標準衛星バス「NEXTAR」(NEC Next Generation Star)である。

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