人工衛星は輸出産業になれるか、NECが「ASNARO」に託した願い:宇宙開発(2/4 ページ)
日本の人工衛星開発を支え続けてきたNECが、宇宙事業の拡大に向けて開発したのが小型衛星「ASNARO(アスナロ)」だ。同社は、ASNAROを皮切りに、宇宙事業の国内官需依存からの脱却だけでなく、宇宙ソリューションビジネスの立ち上げをも目指している。
標準衛星バスとは
衛星にはさまざまな機器が搭載されるのだが、多くの衛星で共通して搭載されるものと、衛星の目的によって変わるものに大別できる。共通する機能はバス部、特有の機能はミッション部と呼ばれる。例えば、電源系、通信系、姿勢制御系などはバス部で、望遠鏡やレーダーはミッション部というわけだ。PCで考えてみると、OSとアプリケーションの関係に似ているかもしれない。
1つの衛星を作るとき、丸々全部を一から設計していたら開発に時間がかかり、コストも上がってしまう。しかし、バス部を標準化しておき、使い回すことができれば、新たに開発するのはミッション部だけで済む。これが標準衛星バスの利点だ。価格や納期がシビアな商業衛星は基本的に標準衛星バスを利用しており、海外の大手衛星メーカーでは複数種類がラインアップされている。
NEXTARは、500kgクラスの小型衛星向けに開発された標準衛星バスである。その大きな特徴は、搭載機器間の通信に標準規格である「SpaceWire」を全面採用したこと、そして搭載コンピュータを全て「SpaceCube2」で共通化したことだ。
従来は、通信が必要な機器間を直接つなぐことも多かったが、これだと配線が非常に複雑になってしまう。設計変更で機器を追加しようと思っても、かなり大変だ。しかしNEXTARだと、SpaceWireルーターにケーブルをつなぐだけで、簡単に機器を追加できる。まるで、LANにプリンタを追加するような感覚だ。
また、従来はデータ制御用、姿勢制御用、ミッション制御用など、それぞれ機能が異なる専用コンピュータを開発していたが、NEXTARでは同社が開発した汎用コンピュータのSpaceCube2を採用、大幅な小型化を実現した。SpaceCube2にはTRONベースのリアルタイムOSが搭載されており、ソフトウェアを変えるだけでさまざまな制御に対応できる。
NEXTARは、構造的/熱的にもバス部とミッション部が明確に分離しており、バス部の上にミッション部が搭載される形態になる。このミッション部を変えるだけで、光学衛星やレーダー衛星はもちろん、さまざまな用途に対応することが可能だ。また前述の特徴により、バス部自体のカスタマイズもしやすいという特徴がある。
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