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多孔質ステンレス鋼基板と電解質ナノ粒子を用いた固体酸化物形燃料電池を開発:材料技術
産業技術総合研究所は、金属を支持体とした固体酸化物形燃料電池を、ポーライトと共同開発した。もろくて割れやすいセラミックスが支持体の固体酸化物形燃料電池に比べ、強靭化している。
産業技術総合研究所(産総研)は2023年12月11日、ポーライトと共同で、金属を支持体とした固体酸化物形燃料電池(SOFC)を開発したと発表した。もろくて割れやすいセラミックスが支持体のSOFCに比べ強靭化している。
今回の研究では、ポーライトがSOFC用の多孔質ステンレス鋼基板を、産総研が電解質ナノ粒子を開発した。これらを組み合わせ、実用サイズとなる5cm角の金属支持SOFCを開発。実験では、開回路電圧(OCV)が1V以上となり、750℃で実用レベルの0.6W/cm2の出力密度を確かめた。
金属支持SOFCは、基板上に金属触媒とセラミックスの混合物からなる粒径1μm程度の多孔質電極を積層するため、金属粒子や多孔質金属の孔径を制御する必要がある。ポーライトは、基板表面の孔径を約50〜約10μmまで任意に制御。基板全体の気孔率はいずれも約50%で、良好なガス拡散性を示した。
また、多孔質ステンレス鋼基板はセラミックスに比べて耐熱性が低いため、産総研では平均粒径70〜150nmのジルコニア電解質ナノ粒子を開発。これを添加して焼結すると電解質内の貫通孔が減り、ガスバリア性が向上した。
強度に優れる金属支持SOFCは、従来のSOFCでは困難だった自動車やドローンなどのモビリティへの搭載が期待される。今後、電極の改良などにより、低温下での出力向上や長寿命化に取り組み、大型化、量産化を目指す。
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