産総研の研究成果をマーケティングで社会実装、AIST Solutionsが設立記念式典:製造マネジメントニュース
産業技術総合研究所(産総研)の完全子会社であるAIST Solutionsが設立記念式典を開催。企業の経営者や大学の研究者、政府関係者など約200人の来賓が参加した。
産業技術総合研究所(以下、産総研)の完全子会社であるAIST Solutionsは2023年5月26日、東京都内で設立記念式典を開催した。約8800人が所属する産総研の研究成果を、約150人のマーケティング専門家が社会実装を加速させていくというAIST Solutionsの今後の活動方針に賛同し、企業の経営者や大学の研究者、政府関係者など約200人の来賓が参加した。
産総研 理事長 兼 最高執行責任者の石村和彦氏は「社会課題解決と産業競争力強化という産総研のミッションは研究成果をただ生み出すだけでは達成できない。企業やスタートアップの製品やサービスとして研究成果を社会に実装することが不可欠だ。AIST Solutionsは産総研にはないマーケティング機能によって、産総研のポンテンシャルを最大限に引き出すことが求められており、民間から強力なメンバーに入ってもらった。その代表がAIST Solutions 代表取締役社長の逢坂(清治氏)だ。TDKの戦略本部長を務め同社のトランスフォーメーションをけん引してきた。その戦略企画、提案力、執行力に大いに期待している。来場の皆さまには、ぜひ産総研グループを最大限使っていただきたい。決して損はさせない。必ず役に立つことを約束する。より骨太で野心的な共同研究を実行するために、トップ自ら決断していただきたい」と訴える。
逢坂氏「科学技術が描く、美しい未来社会へ向かって」
2023年4月1日付で設立されたAIST Solutionsは、日本最大級の公的研究機関である産総研の技術資産と研究資源を活用し、積極的なマーケティング活動を通じて、市場や産業のニーズに即応すべく、オープンイノベーションの強化、エコシステムの構築や新規事業創出を目指している。
AIST Solutionsが掲げているのが「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の実践である。ナショナル・イノベーション・エコシステムでは、産総研グループや大学、国研などによる課題設定から始まった基礎研究を企業との応用研究に早期につなげ、実証研究を経て社会実装を可能にするような循環型の事業価値創造を目指していく。また、企業との共同研究の対象にならない場合でも、独自事業価値がある研究テーマはスタートアップとして起業し支援していく方針である。
設立記念式典開催と同日の2023年5月26日には、生物の毒液の成分として知られるジスルフィドリッチペプチド(DRP)を基に医薬品や農薬を開発するVeneno Technologiesを、AIST Solutionsスタートアップ第1号として認可し、支援していくことを決めている。
また、AIST Solutionsが社会課題解決と産業競争力強化を目指す具体的な領域として「エナジーソリューションズ」「エッジAI・半導体」「サーキュラーエコノミー」「マテリアルDX」「バイオ・ウェルビーイング」「デジタルプラットフォーム」の6つを定めている。
逢坂氏は「科学技術とマーケティングを掛け合わせることで社会課題を解決し、新たな事業価値を創出する、ともに貢献する、それがわれわれのミッションだ。皆さんと一緒に、科学技術が描く、美しい未来社会へ向かっていきたい」と述べている。
なお、設立記念式典では、経済産業大臣の西村康稔氏がビデオメッセージを寄せた他、衆議院議員の甘利明氏が祝辞を述べ、2023年3月末まで産総研の外部理事を務めた日立製作所 執行役社長兼CEOの小島啓二氏が乾杯の音頭を取った。
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