検索
連載

ディープテックスタートアップの聖地を目指すつくば、世界的拠点形成に挑戦スタートアップシティーつくばの可能性(1)(1/3 ページ)

筑波研究学園都市としての歴史を背景に持つ茨城県つくば市のスタートアップシティーとしての可能性を探る本連載。第1回は、茨城県 産業戦略部の担当者へのインタビューを通して、ディープテックスタートアップの聖地を目指すための取り組みを紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 日本経済が成長軌道を取り戻すためには、既存企業の競争力の高まりに加えて、勢いのあるスタートアップ企業の出現が不可欠だ。スタートアップの一大拠点として名をはせている米国のシリコンバレーやボストン、中国の深センのようなスタートアップ育成に特化した都市の存在が、有力なベンチャーを育み、産業の創出や技術革新を推し進め、地域経済のみならず、国の経済発展にも寄与している。

 日本もこれらの都市に続けと、各地方自治体がスタートアップ支援に力を入れている。中でも茨城県のつくば市は、筑波研究学園都市としての歴史を背景に、早くからスタートアップ企業育成に取り組んでいる注目の都市だ。本連載では、茨城県によるスタートアップ企業育成の取り組みや、スタートアップシティーつくばの現在をレポートする。さらに、つくば市発のスタートアップ企業を紹介し、その成果や未来のオープンイノベーションの可能性などについても深堀りしていく。

 連載第1回では、茨城県 産業戦略部 技術振興局 技術革新課 課長補佐の大森貴弘氏と同課 主査の堀越瑞紀氏へのインタビューを通して、茨城県が進めるスタートアップ支援やつくば市のスタートアップシティーとしてのポテンシャルを探る。

茨城県 産業戦略部 技術振興局 技術革新課 課長補佐の大森貴弘氏(中央)と同課 主査の堀越瑞紀氏(右)。インタビュアーは、TSUKUBA CONNECT managerを堀下恭平氏(左)が務めた
茨城県産業戦略部 技術振興局 技術革新課 課長補佐の大森貴弘氏(中央)と同課 主査の堀越瑞紀氏(右)。インタビュアーは、Venture Cafe Tokyo TSUKUBA CONNECT managerの堀下恭平氏(左)が務めた[クリックで拡大]

スタートアップの世界的拠点としてのアドバンテージ

 日本政府は2022年をスタートアップ創出元年と位置付け、5カ年計画に沿った支援に着手しており、ユニコーン100社、スタートアップ10万社の創出を目標とする大規模な計画に乗り出した。茨城県はこの政府の動きに先んじて2017年から県内のスタートアップ支援に注力している。2022年には2016年比で資金調達額が約4倍に増加するなど、既に効果が表れている※1)

※1)2016年に8億円だった資金調達額が2022年には29億円にまで増加した(INITIAL『Japan Startup Finance 2022』)。

堀越瑞紀氏
堀越瑞紀氏

 つくば市でスタートアップを立ち上げるアドバンテージにはどのようなものがあるのだろうか。堀越氏は「1963年に国から研究学園都市に指定されて以来、つくば市には筑波大学や29の国研(国立研究所)を含め、150もの研究機関が集まっています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)やNIMS(物質・材料研究機構)、AIST(産業技術総合研究所)、NARO(農業・食品産業技術総合研究機構)など、日本の名だたる研究機関が存在し、2万人もの研究者(うち博士号取得者約1万人)がここつくば市で働いているのです。こうした背景をベースに近年、大学/研究所発スタートアップの数は右肩上がりに増え続け、2022年には筑波大学発の企業が209社※2)、AIST発の企業が153社と勢いを見せています」と語る。

※2)筑波大学は全国の大学発ベンチャー企業数のランキングで全国4位(経済産業省『令和3年度大学発ベンチャー実態等調査』)。

 また、つくば市ならではの好立地も、オープンイノベーションを引き起こすのに欠かせない要素だと指摘する。「つくばエクスプレスなら約45分、高速道路を使えば自動車で約60分と、東京からのアクセスが良好です。東京の大企業や経営人材、投資家の方々との共同開発や協業に際しても、有利な立地だといえるでしょう」(堀越氏)。

 筑波研究学園都市としての歴史から既に研究所が多くあり、人財や知財も豊富。さらに首都圏に近く、民間企業とのコラボレーションがしやすい。これら2つの要素はスタートアップ育成において大きなメリットになる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る