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ディープテックスタートアップの聖地を目指すつくば、世界的拠点形成に挑戦スタートアップシティーつくばの可能性(1)(2/3 ページ)

筑波研究学園都市としての歴史を背景に持つ茨城県つくば市のスタートアップシティーとしての可能性を探る本連載。第1回は、茨城県 産業戦略部の担当者へのインタビューを通して、ディープテックスタートアップの聖地を目指すための取り組みを紹介する。

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研究シーズ豊富なつくば市のスタートアップはディープテックに強み

 では茨城県としてはこのつくば市の強みをどう引き出し発展させようとしているのだろうか。堀越氏は、つくば市のスタートアップ企業の特色は“ディープテック分野”で成果をあげていることだという。

「増え続ける大学/研究所発スタートアップの中でも、ディープテックスタートアップの数が多く、大学や研究機関での長期に及ぶ研究が生んだシーズを生かして起業し、事業化に向けて挑戦するスタートアップが多数出ていることに、注目していただきたいです」(堀越氏)

 ここで言うディープテックとは、研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術で、その事業化や社会実装の実現により、社会に大きなインパクトを与える技術のことで、近年起業テーマとしても関心を集めている。AI(人工知能)やロボット工学、ライフサイエンス、宇宙、エネルギーなど分野は多岐にわたり、膨大な開発コストと時間を要するものの、開発に成功し事業化できればリターンは大きい。

 こうしたディープテックを活用したイノベーティブな製品やサービスを提供するスタートアップであるディープテックスタートアップをいかに創出するかは、特に技術競争力の低下が問題となっている日本において、経済復調の鍵となり得るテーマである。筑波研究学園都市としての歴史により、既に豊かな研究シーズを持つつくば市は、ディープテックスタートアップが育つ土壌に恵まれた、まれな都市だといえるだろう。

茨城県によるスタートアップ育成のための三本柱とは

 ベンチャーの基となる研究シーズの蓄積が強みとなり、つくば市では多くのディープテックスタートアップが生まれている。では、茨城県は具体的にどんな支援を行っているのだろうか。

茨城県 産業戦略部の大森貴弘氏
大森貴弘氏

 茨城県はその柱として「創出・育成・拠点作り」を掲げている。それぞれの柱を立てるための、具体的な施策を大森氏に聞いた。

 まず1つ目の創出では、大学や研究所などの共同研究の促進、優れた研究シーズの発掘と事業化、起業支援金の提供を行っている。大森氏は「各研究室が発表している論文を専門家が精査して、可能性のある研究や技術に積極的にアプローチし、共同研究の促進や事業化などにつなげています」と述べる。

 2つ目の育成では、オフィス提供や海外展開の支援、資金調達支援などを積極的に行っている。「特にディープテックスタートアップは急激な成長が見込まれる分野なので、最初から海外展開を視野に入れた支援体制作りに力を入れています」(大森氏)。

 そして3つ目の拠点作りの核になっているのが、2020年の2月に設立した「つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム(以下、つくばコンソ)」と、同年からつくば市で月に1回開催しているイベント「TSUKUBA CONNECT」である。大森氏は「つくばコンソは、自治体、大学/研究機関、そして企業や金融機関などの民間支援組織が一体となった、産学官金連携によるネットワークです。スタートアップの支援を軸に関係機関それぞれに利する共同体を目指しています。また、TSUKUBA CONNECTは毎回さまざまなテーマでプログラムを展開しています。国内外の多様な人材の交流により、新たな事業展開や投資の呼び込みなどを促進し、世界的拠点の形成を図る上で重要な取り組みになっています」と強調する。

 茨城県は、継続した研究開発が必要となるディープテック分野において、スタートアップ企業の発端となる研究シーズの発掘から育成、そして事業発展のための拠点作りまでを一貫して支援している。その結果としてつくば市には、優れたスタートアップを継続的に生み出すスタートアップエコシステムが形成されつつあるというわけだ。

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