製造業でも急速に広まるデジタルマーケティング、得られる5つの価値とは:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(1)(1/2 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第1回のテーマは「製造業がデジタルマーケティングで得られる価値」だ。
コロナ禍が長く続き、非対面/非接触の営業が求められる中、既存のアナログなマーケティング手法からデジタルマーケティングへと大きくシフトした製造業は多い。しかし、製造業特有の事情を鑑みたデジタルマーケティングのノウハウはあまり知られていないのが実情だ。B2C分野におけるマーケティングでの成功事例を基にした、間違ったアプローチを行っている企業もしばしば見かける。当社(テクノポート)に寄せられる相談を見ても、初歩的なところでつまずいていると感じる製造業の担当者が少なからず存在する。
そこで、当社の実績と経験に基づく「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」をMONOist読者に伝えることで、製造業でマーケティングDXを推進するきっかけにしてほしいと思い、当連載を開始させていただくことになった。
1回目は「製造業がデジタルマーケティングで得られる価値」について取り上げる。自社のデジタルマーケティング活動の目的を、改めて確認する機会としていただければ幸いだ。
デジタルシフトの傾向は一過性ではない
冒頭で、コロナ禍において製造業のマーケティング領域におけるデジタルシフトが一気に加速したと述べた。これはコロナで対面スタイルの展示会が開催されなかった間にデジタル施策に予算が回り、デジタルマーケティングに取り組む製造業が増加したためだ。
その結果、多くの製造業がデジタルマーケティングの効果を実感するようになった。2021年1月に行われたある調査では、商談につながりやすい問い合わせのチャネルは「Webサイトから」という回答が58.0%で1位を獲得している。これは「展示会から」の回答割合を大きく上回る数値だ。
さらに2021年9月の別の調査では、62.6%の企業がコロナ収束後もWebサイト改修やコンテンツの強化をしていくと回答している。デジタルシフトの傾向は一過性のものではなく、しばらく続くものと考えられる。
また、発注者側も展示会場での情報収集の機会を失い、インターネット検索などを使った情報収集に注力するようになった。その結果、コロナ収束後もWeb情報収集は製品導入検討の決定打になるかという質問に、「かなりそう思う」「そう思う」とした回答が合計で7割以上を占めている。製品導入のための情報収集においてもデジタルシフトが進んだといえる。
B2Bでは「購買タイミング」をつかむことが大事
なぜ、これほど多くの製造業がデジタルマーケティングを評価しているのか。それは費用対効果が高いからだが、その背景には製造業の顧客に特有の購買行動がある。B2B取引を行っている製造業において、ターゲットとなる法人顧客は基本的に決められた予算計画のもと、計画的に購買活動を行うことが多い。一般消費者のように顧客が衝動買いするようなことはないのだ。
そのため、テレアポや飛び込み営業といったプッシュ営業を行っても、顧客の購買タイミングと合わなければ検討に至ることはほとんどない。つまり、B2Bマーケティングでは顧客の購買行動や購買タイミングに合わせた営業活動を行うことが必須となる。
それに対してデジタルマーケティングであれば、リード※1を保有していればマーケティングオートメーション(MA)ツールを活用することで、見込み客の購買タイミングを効率的につかめる。さらに新規で獲得できたリードは、多くが購買タイミングに達した顧客側からの問い合わせのため、受注確度が高い。
※1:見込み客やその情報のこと。
このためデジタルマーケティングはプッシュ営業や展示会営業といった従来の手法よりも高い費用対効果が感じられるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.