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製造業でも急速に広まるデジタルマーケティング、得られる5つの価値とは間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(1)(2/2 ページ)

コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第1回のテーマは「製造業がデジタルマーケティングで得られる価値」だ。

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デジタルマーケティングで製造業が得られる5つの価値

 一口にデジタルマーケティングに取り組むと言っても、施策や得られる効果は多岐にわたる。そのため確実な効果を得るには、デジタルマーケティングの価値を正確に理解し、その価値を得るための正しい施策を実施する必要がある。

 製造業がデジタルマーケティングにより得られる価値は、大きく以下の5つに分類される。

  • 新規顧客獲得単価を下げられる
  • 技術の用途開発につながる
  • 技術・製品のブランディングができる
  • 保有リードを顧客化できる
  • 既存顧客を効率的にフォローできる

(1)新規顧客獲得単価を下げられる

 マーケティング予算に限りがある製造企業は、新規顧客獲得単価を最低限に抑える手段としてデジタルマーケティングを活用してほしい。

 具体的な方法としては、「購買フロー後期段階の見込み客を集中的に狙う」ことをおすすめする。B2Bマーケティングにおけるターゲット顧客は、決められた予算の中で慎重に購買活動を行うケースがほとんどで、以下の図のようなフローで行われるケースが多い。


購買活動のフロー。購買フロー後期段階の見込み客を集中的に狙う[クリックして拡大]

 効率的に新規顧客獲得を行いたいのであれば、購買フローの後期段階の見込み客にターゲットを絞って集客することで、短期間で顧客獲得を達成できる可能性が高まる。SEO対策やリスティング広告といった施策を使い、後期段階の見込み客が使用すると考えられるキーワードを中心にマーケティングを進めていくとよいだろう。

(2)技術の用途開発につながる

 自社技術が既にシェアを獲得している市場ではなく、異なる市場へと展開して技術の提供価値を高めたいのであれば、デジタルマーケティングは「技術の用途開発」を実現する有力な手段になる。

 用途開発マーケティングは一般的なマーケティングとは異なり、さまざまな分野に属する技術者に自社技術を周知させなければならない、という難しさがある。それには、MFTフレームワーク※2などを活用して技術の棚卸しを行い、要素分解した上でWebコンテンツを制作し情報発信する必要がある。そうすることで、さまざまな技術者に、満遍なく技術情報を知ってもらう機会を創出できる。

※2:製品化や事業化を検討する際に、「Market(市場)」「Function(機能)」「Technology(技術)」の視点で分析するフレームワーク

(3)技術/製品のブランディングができる

 ターゲットとする業界で自社の知名度を高め、第一想起※3してもらえる会社を目指す。その場合、デジタルマーケティングは「ブランド力」を高める上で役立つ。

※3:ある領域で、顧客が一番に思い浮かべるブランド。

 自社技術/製品の知名度を上げることで、潜在的なニーズを持つ見込み客がいざ購買活動を行うときに、競合他社よりも優先的に問い合わせてもらえるようになる。ブランディングを高める手法としては、前述の「新規顧客の獲得単価を下げる場合」とは真逆の、初期段階の「まだニーズが潜在的な見込み客」をターゲットに設定する。


購買活動のフロー。ニーズが潜在的な見込み客をターゲットとする[クリックして拡大]

 購買活動のフェーズに入っていない見込み客も情報収集は日常的に行っている。この段階の見込み客が情報収集する際に役立つコンテンツを企画して情報発信することで、少しずつ自社技術/製品の認知度を高めていく。こうすることで、ニーズが顕在化したタイミングで第一想起される存在へとなれる。

(4)保有リードを顧客化できる

 展示会で獲得した名刺などが数多く机の引き出しの中に眠っているケースは少なくない。その顧客情報を生かしてマーケティング活動をするのであれば、デジタルマーケティングは「既存リードの顧客化」を実現する手段として使えるだろう。

 まずは、名刺をデジタル情報として管理するためにMAツールを導入する。次に、リードに役立つコンテンツやニーズを育成するようなコンテンツを制作し、定期的にメールマガジンなどで情報を配信していく。MAツールを活用することで、どのリードがメールマガジンを開封してくれたのか、製品紹介ページへアクセスしてくれたのか、資料をダウンロードしてくれたのかなどの動きが可視化できる。ニーズが高まったタイミングで営業担当者からリードへアプローチを行えば、効率のよい商談化が可能となる。

(5)既存顧客を効率的にフォローできる

 既存顧客からの取引量を最大化したいのであれば、デジタルマーケティングによって「既存顧客のフォロー」を目指すべきだ。

 長年にわたり取引を行っている既存顧客でも、自社が取り扱っている製品/技術全てを知っているとは限らない。まずは自社の取り組みを幅広く認知してもらうためにも、メールマガジンなどで定期的な情報発信を行う。MAツールを使えば、目に見えない顧客のニーズを可視化できる。この情報を基に営業活動を行えば、顧客フォローに要するコストを下げつつ、営業担当者による生産性の偏りを減らすことができる。


 それぞれの価値を実現する手法の具体的な進め方などについては、次回以降の記事で詳しく解説していく。やみくもにデジタルマーケティングを推進するのではなく、まずは自社のマーケティング課題を特定するところから始めるべきだ。その上で、上述した価値の中で、自社が抱えるマーケティング課題の解決につながるものを見つけ、適切な施策を実行してほしい。

⇒本連載の目次はこちら
⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧

筆者紹介

徳山正康(とくやま まさやす)
テクノポート株式会社 代表取締役

製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手掛けるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。
グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家。


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