IHIが天然ガスの熱分解で水素製造、副産物の炭素は9割回収:脱炭素
IHIは、新たな水素製造技術として開発を進めている、天然ガス熱分解で水素を製造する技術を備えた試作機の実験を開始する。
IHIは2023年12月25日、新たな水素製造技術として開発を進めている、天然ガス熱分解で水素を製造する技術を備えた試作機の実験を開始すると発表した。同月からIHI横浜事業所(横浜市磯子区)で1日当たり水素製造量が10キロ(kg)の試作機の運用を開始し、商用化に向けたさまざまな基礎データの取得を開始する。
最大で1日当たり100tの水素製造を目標に
開発を進める、天然ガス熱分解を用いた水素製造技術は、天然ガスを加熱し水素と固体の炭素に分解する技術だ。従来の水蒸気改質による水素製造技術に比べ、単位当たりの水素を生成するために必要なエネルギーを約4割削減できる。熱分解によって生じた炭素は90%以上を固体として回収可能なため、CO2排出量の大幅な削減に貢献する。
触媒には鉄鉱石を使用し、鉄鉱石のハンドリングには、IHIが長年保有してきた流動層技術を活用することで、最大で1日当たり100tの水素製造を目指す。この仕様により、従来の水素製造技術に比べて低廉でCO2排出量が少ない水素製造技術を確立する見通しだ。
加えて、固体化した炭素については貯留を想定している他、土壌改質や水質改善などに利用することも検討している。
なお、同技術は、再生可能エネルギー由来の電力を熱源として、鉄鉱石と天然ガスの産出国である米国、豪州で2020年代後半の実用化を目指す。
また、同社は、将来大幅な普及が期待されている水電解による水素製造に先駆けた、既存の天然ガス設備を利用した過渡的な技術と考えており、水素および燃料アンモニアの普及に大きく貢献する技術としている。
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