IHIが食品3Dプリンタの開発に挑戦、将来は宇宙ステーションでの調理も:惣菜・デリカJAPAN
IHIエアロスペースは「惣菜・デリカJAPAN」において、協働ロボットを活用した食品3Dプリンタの技術紹介を初めて行った。将来的には宇宙ステーションでの調理器具としての利用を目指す。
IHIエアロスペースは「惣菜・デリカJAPAN」(2023年9月20〜22日、東京ビッグサイト)において、協働ロボットを活用した食品3Dプリンタの技術紹介を初めて行った。将来的には宇宙ステーションでの調理器具としての利用も目指す。
会場のデモンストレーションではDobotの協働ロボットのハンド部分に、ノードソンのジェットディスペンサーを付けて、煮物和風ジュレやフルーツの盛り合わせなど4種類、100mm角ほどのサンプルを10分ほどで造形した。
約70ccのシリンジには4種類のフードインク(食材)が層となって入っており、下から順番に吐出していくことで、さまざまなフードインクを使った造形が可能になっている。協働ロボットは、ディスペンサーの先端にフードインクが固まらないよう逐次拭く動作に加え、フードインクの種類が切り替わるタイミングでそれまでに造形した食品を固めるためにヒーターを動かして加熱も行っている。
食材の開発には、十文字学園女子大学が協力した。食材は元となる食材のパウダーに、増粘多糖類やゲル化剤、水を混ぜ合わせた。各食材の硬さや付着性をそろえることで、同じシリンジに異なる食材を入れても混ざらないようになっている。今回は、いちごやブルーベリー、レモン、生クリーム、こんにゃく、里芋、人参など16種類用意した。
IHIエアロスペースでは食品3Dプリンタの開発を3年ほど前に開始したという。同社では航空機エンジン部品の製造工程において、ロボットの先端にディスペンサを付けた塗装を行っており、そのノウハウを活用した形だ。
ディスペンサーの能力にはまだ余裕があり、ロボットのスペックによってはより高速に造形することもできるという。現在の装置の構想モデルは、装置寸法が幅560×奥行560×高さ950mmで、調理可能食品サイズは幅120×奥行120×高さ50mm。機内ではパラレルリンクロボットが500mlのカードリッジを使って10分ほどで調理する予定だ。今後は食材の食感や味の向上にも取り組む。
同社では宇宙用ロケットや宇宙ステーション関連製品も開発しており、将来的には宇宙での調理も目指す。
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