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AM(アディティブ・マニュファクチャリング)が実製品活用されない国内事情とは何か金属3DプリンタによるAMはなぜ日本で普及しないのか(1)(1/2 ページ)

新しいモノづくり工法であるAMは、国内でも試作用途では導入が進んできている一方、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていない。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。

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 新しいモノづくり工法であるアディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing、積層造形。以下、AM)は、日本国内でも試作用途では導入が進んできていますが、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていません。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察します。AMに大きな期待を持ち、活用に努力をされている全ての方々に敬意とエールを送るとともに、AMから去らざるを得なかった多くの方々への謝意を込めて記載いたします。

 第1回では、私がAMに携わるようになった経緯とAMの実製品活用における課題について触れます。

なぜ日本AM協会を立ち上げたのか

 私は現在、国内におけるAM実製品活用の普及を目指す一般社団法人 日本AM協会で専務理事を務めています。

 社会人になってから全てと言っても過言ではないくらい、私は新製品や特殊製品の販売に関与してきました。製品仕様のヒアリングを1、2回受ければ初歩的な販売活動はでき、1カ月も販売活動をすればその製品のプロとしての対応はできると思っていました。

 そんな私がAM(当時は「3Dプリンタ」)の専任販売担当に1人命じられて異動したのが2013年10月でした。2012年に当時の米国大統領バラク・オバマ氏が、一般教書演説でAMを取り上げたことから始まったAMフィーバーのころです。AMの知識が全くなかった私ですが、短時間の情報収集でその斬新さに目を見張り、ビジネスへの期待が大きくなったのは言うまでもありません。

 しかし、AM装置メーカーへの同行や企業訪問を重ねる度に、現工法と比較してデメリットも多いこと、そしてAMには多種類の造形方式があり、各方式でさまざまな長所と短所が混在することを知り、1カ月を経過してもAMビジネスのプロとは言い難い状況であることに気が付きました。

 ただ企業側の反応は大変良く、「導入を検討したい」「大変興味を持っている」との言葉を多く聞き、企業フォローリストはすぐに100件を超えました。過去の経験ではこのような場合、良くて3割、悪くても1割のフォローリスト企業は具体的導入に進捗するのですが、現実はフォローリストが増えても具体的導入には至らず、何が悪いのか試行錯誤する日々になりました。

 このような状況が自分だけなのか不思議に思った私は、メーカーの営業担当者や同業者に意見を求めたところ、私だけが感じている問題ではないことを知りました。「AMはビジネスにならないのか?」。そんな感情を抱きながら海外を中心に情報(事例)入手したのですが、海外のAM活用情報を知れば知るほどAMへの期待感は増していきました。

海外におけるAM実製品活用状況
海外におけるAM実製品活用状況[クリックで拡大]出所:日本AM協会

2014年に兵庫県立工業技術センターで行った初セミナーの風景 出所:日本AM協会

 「では、どうしたらいいのか?」。考え悩みいろいろな方に相談した結果が、企業団体としての普及活動によるAMビジネスの活性化でした。国内AM市場(事例)が少ない中で、AM関連企業が個々に活動してもAM市場の活性化は難しいと判断しました。試しにAM関連企業複数社でセミナー開催を計画し、兵庫県立工業技術センター(公設試)に相談したところ、ご賛同をいただき大変盛況に開催することができました。

 その開催結果を契機に、三菱電機株式会社(現OB)の奥野隆三氏のご指導を参考にした、任意団体「3Dものづくり普及促進会」を2014年3月にAMビジネス関連企業4社で立ち上げました。この時、公的な団体で真っ先にオブザーバーとして登録を許可していただいたのが、公設試験研究機関の兵庫県立工業技術センターでした。この時のご担当で現在もご協力いただいている兼吉高宏氏には、制限事項の多い中でご尽力を賜ったことに心より感謝をしています。

 また、任意団体として8年間、経済産業省(近畿、中部、関東各局)や公的機関、研究機関にご協力、ご支援をいただき、現在の一般社団法人設立に至る大きな力になったことは言うまでもありません。では、その間に国内AMビジネスは大きく成長できたのでしょうか。

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