“人の指”でロボットを器用に、NSKがフィンガーモジュールや屋外走行ロボを訴求:2023国際ロボット展(2/2 ページ)
NSKは「2023国際ロボット展」において、独自技術を生かした“人の指”状のモジュールである「フィンガーモジュール」や多様な走行環境に対応する屋外走行ロボットなどを紹介した。
独自技術を盛り込んだ世界初出展の屋外走行ロボット
iREX2023で世界初出展を行ったのが2つの搬送系の技術だ。1つは、リンク式サスペンションや振り子構造による姿勢維持機能などを盛り込んだ「屋外走行ロボット」である。
新たに開発した屋外走行ロボットは、悪路でも安定して走行し搬送作業を行えるようにNSK独自技術を盛り込んで実現したものだ。片側3輪ずつの6輪で走行を行うが、片側3輪でパンダグラフ形状のリンク式サスペンションを採用し、駆動輪を確実に接地する。凹凸のある路面でも最大50mmの段差走行を可能としている。さらに、振り子構造の姿勢維持/免振ユニットを採用し、最大10度のスロープや段差昇降時の荷物の姿勢変化を抑制し、加速や減速の衝撃を軽減できる。
駆動輪は、ダイレクトドライブモータを採用しており、摩擦を軽減するとともに静粛性を実現する。また、ボディーの低床化(312mm)により、荷物の重心を低く抑え、走行時の車体の安定性を強化している。自律走行機能は、画像による3D認識を採用しており、2次元認識よりも高精度な環境認識を実現している。今後は2025年の市場投入を目指すとしている。
全方向への滑らかな移動が可能な駆動ユニット「PalGo」
もう1つの世界初出展の技術が、全方向への滑らかな移動が可能な駆動ユニットである「PalGo」だ。段差やカーペット、凹凸など床面を問わない自由な全方向移動を簡単に実現できる駆動ユニットで、キャスター部分だけを販売する計画だとしている。駆動ユニットは、1輪につきモーターを2個搭載し、その回転速度差で操舵や走行を制御する。
既に一部で先行実証を進めており、2024年度の実用化を計画しているという。「さまざまな分野の企業から引き合いがある。全方向移動が可能で省スペースで方向転換できる点が評価を受けている。また、既存のAMRなどでは段差やカーペットなど路面環境によって移動できない場面も多く、そうした課題を解決したいという声も多い」(説明員)。
販売方式については「基本は駆動ユニットのみの提供を考えているが、要望によってはシステムアップした形で納入することも検討している。多様な声を聞いていきたい」(説明員)としている。
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