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モバイルアプリがグリスの状態/余寿命を現場で即診断、NSKが2025年に製品化へFAニュース(1/2 ページ)

日本精工は軸受や直動製品に使われるグリスの劣化診断と余寿命の測定が可能なモバイルアプリの開発を開始したことを発表した。グリスの余寿命を現場で短時間かつ高精度に測定できる手法は世界初という。

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 日本精工(以下、NSK)は2023年10月24日、軸受や直動製品に使われるグリスの劣化診断と余寿命の測定が可能なモバイルアプリの開発を開始したことを発表し、同日行ったオンライン会見で概要を説明した。同社によれば、グリスの余寿命を現場で短時間かつ高精度に測定できる手法は世界初という。2025年度のサービス開始を目指している。

グリス点検を状態基準保全へ、コスト低減にも貢献

 工作機械をはじめとする産業機械には、数多くの軸受や直動製品が使われている。その中で、グリスは軸受や直動製品などの転動体が転がる軌道輪を潤滑し、摩耗や摩擦を減少させる役割を担っている。

 グリスは時間の経過に伴って劣化して潤滑性能が低下するため、現状では定期的にグリスの劣化状態を点検し、状態に応じて随時新しいグリスを補給している。

グリス点検の概要
グリス点検の概要[クリックで拡大]出所:NSK

 現場における点検では、グリスに含まれる金属摩耗粉を測定する鉄粉濃度計もしくは目視が用いられるが、良否判定はできても余寿命は分からないなど測定精度に課題があった。高精度な測定ができるフーリエ変換赤外分光光度計も存在するが、測定にかかる時間が長かったり、導入コストが高かったりして利用されないケースも多い。

 また、製造現場における人手不足や近年のIoT(モノのインターネット)技術の進化を背景に、定期的に点検を実施する従来の時間基準保全(TBM)から、設備の状態や稼働状況を基にした状態基準保全(CBM)へのニーズが高まっている。

 グリス点検においても、状態基準保全が実現すれば従来の方法と比べて点検工数が削減できる他、設備の損傷リスクを避けるため早めに補給することもなくなりグリスの使用量も削減できる。

現状のグリス点検における課題
現状のグリス点検における課題[クリックで拡大]出所:NSK

 モバイルアプリによる具体的な診断の仕組みは次の通りだ。軸受の転動体付近から10mg程度のグリスをスプーンで採取し、容器に入れて溶剤で希釈して色を鮮明化させる。それを色見本の台紙の上に載せてスマートフォンのカメラ機能を使ってモバイルアプリで撮影することで、希釈されたグリスの色から劣化状態を診断し、アプリ上に余寿命を表示する。余寿命は新品の状態を100%、固化して真っ黒になった状態を0%として表す予定だ。

モバイルアプリによるグリス余寿命診断の流れ
モバイルアプリによるグリス余寿命診断の流れ[クリックで拡大]出所:NSK
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