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モバイルアプリがグリスの状態/余寿命を現場で即診断、NSKが2025年に製品化へ:FAニュース(2/2 ページ)
日本精工は軸受や直動製品に使われるグリスの劣化診断と余寿命の測定が可能なモバイルアプリの開発を開始したことを発表した。グリスの余寿命を現場で短時間かつ高精度に測定できる手法は世界初という。
軸受の総回転数に応じた色の変化を解析、試作アプリを展示会で披露
NSKは40年以上前からグリスを社内で開発する他、ユーザー使用後の返却グリスを分析する技術も持ち、グリスの劣化を研究してきた。その中で、グリスを溶剤に溶かして、余寿命を測定する技術を2022年に確立。今回の色で劣化診断ができるモバイルアプリの開発開始につながった。
グリスは基油、増ちょう剤、添加剤から構成される。このうち、基油および添加剤は熱や酸化により化学変化が起き、色の変化に関わる共役系が増えて短波長の青色の光を吸収するようになり、当初の白色から黄色、橙色に変化する。最終的には、余寿命がない状態の黒色になる。
グリスの色は軸受の総回転数に応じて変化するため、色を分析することでグリスの余寿命を診断ができる。NSKでは社内で軸受を回転させる試験を行い、100時間おきにグリスを採取して検証も行った。
NSKでは、少量のグリスから簡単に余寿命が分かる測定方法およびモバイルアプリ単独での劣化状態の診断は世界初としている。特許、意匠それぞれ出願済みという。
アプリの試作版は既に完成しており、NSKでは2023年11月28日〜12月2日に幕張メッセで開かれる「IPF Japan 2023(国際プラスチックフェア)」で、実際のグリスとモバイルアプリを用いた分析のデモンストレーションを実施する。2024年3月までに国内外でヒアリングを実施してニーズを抽出し、2025年の製品化を予定している。
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