自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”をモデリングする:1Dモデリングの勘所(25)(1/4 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第25回は、自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”を取り上げる。まず、グリーンシティーの全体像を考え、次にこれらを構成する要素の定式化を行う。最後に、全体を統合してグリーンシティーのエネルギー収支をモデリングする。
前回は「風車」のモデリングをテーマとした。今回はその結果を受けて、“自然エネルギーで自活する街”、いわゆる「グリーンシティー」を取り上げる。最初に、グリーンシティーの全体像を考え、次にこれらを構成する要素の定式化を行う。最後に、全体を統合してグリーンシティーのエネルギー収支をモデリングする。身近なエネルギー問題のモデリングを通して、エネルギーのことを考えるきっかけになればとも思う。
自然エネルギーで自活する街
図1にグリーンシティーの全体像を示す。1000×500[m]の敷地の半分を居住区、残りの半分を発電エリアとする。居住エリアには500戸が住んでおり、一戸当たりの面積は500[m2]である。グリーンシティー内だけで自活していくために必要な自然エネルギーとして、太陽光発電と風力発電を有するものとする。また、各家庭には太陽光パネルが設置されており、バックアップ電源とする。グリーンシティーには蓄電設備も設置されており、非常時に対応できることとし、それでも余剰電源が生まれた場合には売電も可能とする。
太陽光発電によるエネルギー生産
ふく射伝熱で最も身近で、人類にとってかけがえのないものが太陽から放射されるエネルギーである。図2に地球に放射される太陽エネルギーの様子を示す。太陽は地球に比べて高温物体であるため、太陽から地球に向けてふく射伝熱が生じる。表面積A[m2]、表面温度T[K]の球体から放射される単位時間当たりのエネルギー(パワー)Q[W]は次式で表現される。
ここでのσは「ステファン・ボルツマン定数」で、
である。また、ε[-]は放射率である。放射率を1とし、太陽の表面温度T=5780[K]、平均半径r=6.96×108[m]を用いて計算すると、
となる。この単位時間当たりのエネルギーが太陽から四方八方に放射され、その一部が地球に放射されるエネルギーで、
となる。このI0を「太陽定数」という。実際に地球表面に到達するまでには大気層の影響を受けるため、単位面積当たり約1[kW]のエネルギーを受けていることになる。
太陽光パネルは一般には固定式のため、太陽の南天時に太陽光の方向と太陽光パネル面が垂直軸に一致するように設置しても、図3に示すように、それ以外の時刻の場合、エネルギーはsinθ(θは太陽光の軸と太陽光パネルの水平軸のなす角度で、南天時にはπ/2≡90度となる)を乗じた値になってしまう。
例えば、朝6時に日が出て、午後6時に日が沈む場合、面積Aの太陽光パネルが発電する単位時間当たりのエネルギー(電力)は下式となる。
ここでのηsは太陽光パネルの電力変換効率で通常は0.2程度である。ηcは天候によって変化する係数で、ここでは、
- 晴天時:ηc=1
- 曇天時:ηc=0.75
- 雨天時:ηc=0.15
とする。すなわち、
を太陽光発電の1日の変化で図示すると図4(最大値が1となるように正規化した場合)となる。これから、太陽光発電は自然の影響を強く受けることが分かる。当然のことであるが、夜間には全く発電しない。
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