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自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”をモデリングする1Dモデリングの勘所(25)(3/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第25回は、自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”を取り上げる。まず、グリーンシティーの全体像を考え、次にこれらを構成する要素の定式化を行う。最後に、全体を統合してグリーンシティーのエネルギー収支をモデリングする。

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家庭内の電力網と消費エネルギー

 家庭内電力網として図7を考える。電気は風力発電および太陽光発電から供給されるが、家庭の屋根にも太陽光パネルを設置し、最大発電時には1日の収支として、家庭内の消費エネルギーを賄える設置面積とする。また、非常時を考慮して、各戸には1日分の電気を蓄えておくことのできる蓄電池を設置する。屋根設置の太陽光パネルによる発電エネルギーは、余剰時には蓄電池に蓄えられるが、蓄電池が満充電状態の場合には、余剰電力は公共網を通して発電エリアの大規模蓄電池に送られる。一方、家庭内の消費電力は通常の家電機器(照明、テレビ、エアコンなど)の他に、ヒートポンプ式給湯器、電気自動車(EV)の充電からなる。以下、家庭内の消費電力の見積もりを行い、これとエネルギー的にバランスのとれる太陽光パネルの大きさについて考える。

家庭内電力網
図7 家庭内電力網[クリックで拡大]

 ここでは、家族4人の標準的な家庭の消費電力を考える。図8に家庭内消費電力(給湯器、EV充電を除く)の1日の変化(例)を示す。家庭の状況にもよるが、このように夜にピークを有するパターンになるものと考えられる。このパターンを1日で時間積分すると14.8[kWh]となり、これが標準的家庭の1日の消費エネルギーとなる。

家庭内消費電力(給湯器、EV充電を除く)の1日変化の例
図8 家庭内消費電力(給湯器、EV充電を除く)の1日変化の例[クリックで拡大]

 次に、ヒートポンプ式給湯器の消費電力を見積もる。使用するお湯として風呂用に200[L(リットル)]、家事用に100[L]とし、温度上昇をΔT=20[℃]とすると、必要なエネルギーEは以下となる。

式13
式13

 ここでのρは水の密度、cは比熱である。今、5時間(午前10時から午後3時の5時間)かけて上記を達成するための必要電力は、ヒートポンプの特徴(消費電力が3分の1)を考慮して、

式14
式14

であり、総エネルギーは以下となる。

式15
式15

 最後に、EV充電の見積もりを行う。EVの電費を300[Wh/km]、1日の走行距離を50[km]とし、これに必要な電気を毎日充電する場合、必要なエネルギーは、

式16
式16

となる。従って、6時間(深夜0時から朝の6時までの6時間)かけて上記を達成するのに必要な電力は以下となる。

式17
式17

 以上から、家庭内消費電力の1日当たりの総エネルギーは、

式18
式18

となる。一方、太陽光発電の晴天時の発電量は午前6時から午後6時までの間で、

式19
式19[クリックで拡大]

となる。これが家庭内電力消費量32.1[kWh]と等しくなるには、Ahome=21.9[m2]となる。すなわち、太陽光パネルの大きさは3×7[m]とする。

自然エネルギーで自活する街のモデリング

 グリーンシティー全体のエネルギー収支の考え方を最初に決める。ここで、重要なことは外部にエネルギーを売ることはあっても、外部からエネルギーの供給を受けることはないということである。これが“自然エネルギーで自活する街”の大前提である。このために、下記を前提にエネルギー収支を考える。

  • 家庭内のエネルギー消費量と家庭内設置の太陽光パネルによる発電は晴天時には収支がゼロになる(1日当たり)
  • 発電用の太陽光パネルの1日当たりの発電エネルギー(晴天時)は家庭内の1日の消費エネルギーに等しいものとする
  • すなわち、家庭内設置と発電用の太陽光パネルで家庭内1日の消費エネルギーの2倍の発電を行う
  • 一方、天候の影響、1日の変動を考慮して、風力発電でバックアップの発電を行うこととし、その発電量は発電用の太陽パネルによる発電の約半分とする
  • 上記の余剰電源は売電する

 以上から、発電用の太陽光パネルの面積をAとすると、

式20
式20

となり、これからA=1.096×104[m2]となる。この結果から少し余裕をもってパネルの大きさは400×30[m]とする。

 一方、風力発電は図5に示す型式のものとすると、この際の発電エネルギーは図6から1台当たり約1500[kWh]と読み取れる。ここに、風車の台数をNとすると、

式21
式21

となり、これからN=5.86となる。従って、風車の台数は6台とする。

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