自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”をモデリングする:1Dモデリングの勘所(25)(2/4 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第25回は、自然エネルギーで自活する街“グリーンシティー”を取り上げる。まず、グリーンシティーの全体像を考え、次にこれらを構成する要素の定式化を行う。最後に、全体を統合してグリーンシティーのエネルギー収支をモデリングする。
風力発電によるエネルギー生産
風力発電に関しては、前回その定式化について説明した。すなわち、風車の投影面積をA、風車に流入する風速をvとすると、風車が風から受け取るパワーPは、
で表現できる。ここでの、ρは空気の密度、Cpはパワー係数である。すなわち、図5に示すように発生電力は投影面積Aに比例し、風車に流入する風速vの3乗に比例する。図中に代表的な風車の諸元を示す。これを使って、ブレード直径dの風車1台による発電量は風速vのとき、以下で定義できる。
図5に示す通り、P0=250[kW]、d0=24.4[m]、v0=15[m/s]である。図5の代表的な風車の例では、タワー高さが30[m]で、ブレードが最高位置にある場合の地面からの高さは42.2[m]となる。速い風速を得るためにはタワー高さを高くする方がよいが、あまり高くし過ぎると景観上、騒音上の問題が発生する。そこで、ここでは風力発電に関する制約条件として「風車の最大高さは50[m]」とする。
一方、風力発電の最大の問題は風速が安定しないことである。特に、グリーンシティーのように居住地域の近隣で理想的な設置場所を見つけるのは容易ではない。そこで、ここでは風車はシティー内のできるだけ高い(例えば、居住地より10[m]高い)場所に設置することにして、風速の1日の変化を「朝凪(午前6時)、夕凪(午後6時)は風が止まり、正午と夜中に最大風速(定格速度)になる」ものと仮定する。この風の変化が正弦波上に行われるとすると、速度の1日変化は、
となる。Tの単位は時[hour]である。これから風力発電量は、
となる。ここでのvratedは定格風速(設計上の風速)、Pratedは定格風速時の発生電力である。図2に示した風車を採用する場合には、Prated=P0=250[kW]、vrated=v0=15[m/s]となる。風車がN台ある場合の、トータルの発電量は、
となる。定格風速を15[m/s]とした場合の、風速と発生電力の1日の変化を図6に示す。このように、発生電力は風速の3乗に比例するために、朝凪、夕凪時にはほとんど電力を発生しないことが分かる。太陽光発電と風力発電の違いは、太陽光発電は昼のみでかつ天候の影響を受けるのに対し、風力発電は昼夜関係なく、天候にも左右されないことである。ただし、風力発電の最大の欠点は言うまでもなく、風がないと(風速が遅いとほとんど)発電しないことである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.