マイクロLEDを採用した部分消灯ハイビーム、小糸製作所が開発中:ジャパンモビリティショー2023
小糸製作所は「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」において、マイクロLEDを光源に使用した部分消灯ハイビームを披露した。2025年の製品化に向けて開発を進めている。
小糸製作所は「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」(プレスデー:10月25日〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)において、マイクロLEDを光源に使用した部分消灯ハイビームを披露した。2025年の製品化に向けて開発を進めている。
対向車や前走車の位置に合わせてハイビームの一部を消灯するハイビーム可変ヘッドランプ(ADB、Adaptive Driving Beam)は、軽自動車から高級車まで採用されている。安価な小型車では十数個程度のLED素子を使用し、光源を個別に消灯することで機能を実現する。高級車では、少数のLED素子と100万個以上のミラーを制御するMEMSミラーを併用することで消灯できる範囲を大幅にきめ細かく制御する。MEMSミラーを使用するADBは、プロジェクターのように路面にイラストや図形を投影することもできる高精細さを持つ。
これらの中間のシステムでは、小糸製作所が開発した「ブレードスキャンADB」がある。高速回転するブレードミラー(リフレクター)にLEDの光を照射し、光の残像効果を用いて前方を照らす。ブレードミラーの回転に合わせて12個のLED素子の点灯と消灯を制御することで、300個のLED素子を使用するのと同等の高精細な配光を実現した。
小糸製作所がジャパンモビリティショーで披露したのは、マイクロLEDを光源に使用することで、ブレードミラーのような追加部品なしに高精細な配光を行うタイプだ。マイクロLEDには縦256個×横64個で合計1万6384個の光源が並んでおり、これら1つ1つを車両や歩行者の位置に合わせて部分的に消灯する。分解能は0.1度ほどだ。MEMSミラーを使用するタイプのADBと比べて配光のきめ細かさは劣るが、高価なMEMSミラーを使わないためコストを抑えやすいという。マイクロLED自体のコスト低減にも伸びしろがある。
ブレードスキャンADBはブレードミラーを回転させるモーターの信頼性が要求されたが、マイクロLEDを使うタイプは光源1つ1つの点灯や消灯の制御での信頼性確保が開発課題となる。小型車向けのADBと比べて制御対象のLED素子が大幅に増えるためだ。また、1万6000個の細かなLEDの光を狙ったところにゆがみなく正確に届けられるよう、レンズによる光学的な制御も求められる。
今後、小糸製作所は、十数個のLED素子を使用するタイプと、ブレードスキャンADB、マイクロLEDを使用したADBの3種類のラインアップで小型車から高級車までをカバーする。現在はブレードスキャンADBよりマイクロLEDを使用するタイプの方がコストが高いが、ブレードスキャンADBに近づけられるよう開発を進めている。
デンソーとの協業で夜間の安全性向上へ
小糸製作所は、デンソーと共同でランプと画像センサーの協調による物体認識率向上にも取り組む。小糸製作所のハイビーム配光制御技術と、デンソーの物体認識技術を組み合わせ、夜間走行時の安全性を向上するシステムの開発を検討する。
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