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プロジェクター化するヘッドランプ、動くモノに追従した部分消灯が課題に安全システム(1/2 ページ)

オートハイビームは軽自動車にも搭載されるなど広く普及しているが、プレミアムブランドや上位車種向けのヘッドランプは、部分的に消灯する技術の高精度化が進む。消灯する範囲を最小限に抑えるほど、他のより多くの部分にヘッドランプの光が当たり、歩行者や自転車、障害物を認知しやすくなる。各社の取り組みから、ヘッドランプの最前線を追う。

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前方の交通状況に合わせて部分的に消灯するイメージ(クリックして拡大) 出典:日産自動車

 2018年度から国土交通省による自動車アセスメントの評価対象に加わった、「高機能前照灯」。

 夜間の走行中に、対向車など前方の交通状況に合わせて、ハイビームをロービームに自動で切り替えたり、部分的に消灯して他のドライバーがまぶしさを感じないようにしたりするヘッドランプでテストが行われる。

 低速から作動するほど高得点を得られ、ヘッドランプそのものの制御と、前方をセンシングする技術がカギを握る。

 オートハイビームは軽自動車にも搭載されるなど広く普及しているが、プレミアムブランドや上位車種向けのヘッドランプは、部分的に消灯する技術の高精度化が進む。消灯する範囲を最小限に抑えるほど、他のより多くの部分にヘッドランプの光が当たり、歩行者や自転車、障害物を認知しやすくなるためだ。各社の取り組みから、ヘッドランプの最前線を追う。

LEDの個別制御から、プロジェクター化へ


アウディのフラグシップセダン「A8」のヘッドランプ(クリックして拡大)

 部分的な配光制御が可能なヘッドランプは、「アダプティブLEDヘッドランプ」などの名称で自動車メーカー各社が採用している。複数のLED素子を個別に点灯、消灯させることで対向車の部分にハイビームが当たらないようにする仕組みだ。

 例えば、アウディのフラグシップセダン「A8」の現行モデルでは、片側のヘッドランプでLED素子32個(16個×2列)を使用する。前方車両のウインカーが点灯するのをフロントカメラで検知すると車線変更を予測して配光を制御したり、カーブの曲率に合わせて対向車や前方車両の位置を減光したりする高度な機能も搭載している。

 アダプティブLEDヘッドランプは軽自動車にも広がり始めている。ダイハツ工業が2019年7月に発表した「タント」で採用したが、「軽自動車では初」(ダイハツ工業)だという。なお、2019年上期の国土交通省の自動車アセスメントで、タントは高機能前照灯の項目で満点を獲得した。

 一方、多数のLED素子による配光制御とは違うアプローチをとったのは、メルセデスベンツのハイエンドモデル「マイバッハSクラス」に搭載されたヘッドランプだ。使用するLED素子は片側3個だが、デジタルマイクロミラー130万個で構成されたデジタルライトプロセッシングユニット(DLP)を搭載しており、ランプというよりもプロジェクターで白い光を投影するイメージだ。車両だけでなく、歩行者がまぶしさで幻惑するのも防ぐとしている。周辺監視用センサーの情報だけでなく、デジタルナビゲーションマップも活用しながら配光を制御するとしている。

「マイバッハSクラス」のヘッドランプ(左)。デジタルライトプロセッシングユニットを搭載している(右)(クリックして拡大)

標識の部分を消灯することのメリット

 サプライヤーもヘッドランプ向けDLPの提案を強化する。プロジェクターのDLP方式を開発したことで知られるTexas Instruments(TI)は、「米国政府がDLPに合わせたヘッドランプの規制緩和に前向きである」とし、米国市場での搭載拡大を見込む。また、同社は車載用DLPのチームを設け、従来よりも低コスト化と小型化を図った評価モジュールを提案中だ。

 DLPが強みを発揮する場面について、TIは道路標識の形に合わせたピンポイントでの消灯を挙げる。多くの道路標識は光を反射するため、ハイビームの強い光が当たるとドライバーにとってまぶしいだけでなく、前方監視用の車載カメラにも影響する。道路標識に合わせて消灯することは、ドライバーの視認性を確保しながら、カメラによるセンシングのパフォーマンス向上にもつながるという。さらに、路上の障害物をフロントカメラが検知する際にピンポイントでヘッドランプの光の一部を照射することは、障害物や路面の状況を立体的に把握する上で役立つと見込む。

標識の形に合わせて消灯する様子(左)。障害物を立体的に把握する場面でも役立つという(右)(クリックして拡大)
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