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村田製作所が超音波透過メタマテリアルを開発、障害物を透過して超音波を届ける:CEATEC 2023
村田製作所は、「CEATEC 2023」において、表面に張り付けるだけで障害物を透過して超音波を届けられようにする「超音波透過メタマテリアル」を披露した。
村田製作所は、「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日、幕張メッセ)において、表面に張り付けるだけで障害物を透過して超音波を届けられようにする「超音波透過メタマテリアル」を披露した。現在開発中の製品であり、今回の展示を通して協業パートナーを広く募っていく考えだ。
超音波は、その伝達に用いる媒体(大気中であれば空気)と音響インピーダンスの差が大きい物質に当たると、透過せずに反射する性質がある。超音波透過メタマテリアルは、音響インピーダンスが異なる物質上にバネ振り子構造を利用した共振メカニズムを作り込むことで超音波の透過率を向上できる技術である。1つ当たりのバネ振り子構造は、重り部とバネ部で構成された極小ユニットセルになっており、これを並べて配置することで入射した超音波と垂直方向に共振が起こり、超音波を効率よく伝送する。
展示では、水中において一般的なSUS板に超音波を当てても透過しないのに対し、SUS板上にバネ振り子構造を作り込んだ超音波透過メタマテリアルであれば超音波が透過する様子を示して見せた。
水中に設けたデモシステム。手前から超音波を出力して奥側のマイクで受信するが、その間の障害物として一般的なSUS板と超音波透過メタマテリアルを変更できるようにしてある。デモシステムの右側にあるディスプレイ画面には受信した超音波の強度が表示されており、一般的なSUS板ではほとんど超音波が透過していないのに対し、超音波透過メタマテリアルでは超音波が透過していることが分かる[クリックで拡大]
主な用途としては、これまで頭蓋骨に遮られて実現できなかった頭部の超音波検査や海洋での非接触水中ケーブル検査などを想定している。また、自動車の駐車時に用いられている超音波センサーをバンパー内部に組み込むことで、車両のデザイン性の向上や超音波センサーが外部に露出しないことによる高い耐久性などが期待できるとしている。
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