日立の遮音とピクシーダストの吸音を融合、テレワークブースの重量が半減:イノベーションのレシピ
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」において、同社の遮音技術と落合洋一氏が率いるピクシーダストテクノロジーズの吸音技術を組み合わせることで大幅に軽量化したテレワークブースを披露した。
日立製作所(以下、日立)は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」(2023年9月20〜21日、東京ビッグサイト)において、同社の遮音技術と落合洋一氏が率いるピクシーダストテクノロジーズの吸音技術を組み合わせることで大幅に軽量化したテレワークブースを披露した。2023年末までの発売を予定している。
日立では大みか事業所(茨城県日立市)が中核となって、軽量アルミフレーム構造を特徴とするテレワークブースの事業を展開している。外形寸法が幅1200×奥行き980×高さ2190mmの標準品デスク型の製品で重量は約200kgとなっている。
今回展示した軽量テレワークブースは、これまで扉や壁面など透過性が求められる箇所の部材として採用していたガラスをより軽量の透明樹脂板に置き換えた。ガラスと比べて樹脂板は遮音性能が低いことが課題になるが、人の話し声に含まれる500〜1000Hzの周波数帯に特化した吸音性能を備えるピクシーダストテクノロジーズの音響メタマテリアル「IWASEMI RC-α」を透明樹脂板の表面に装着することで対応した。
さらに、大みか事業所がこれまで培ってきたモノづくりの技術を応用した遮音構造の設計技術によって、天井部が密閉状態ではないにもかかわらず静音性を確保している。これらの取り組みによって重量を約100kgに削減した。
重量を半減したことによってさらに可搬性が高まるため、テレワークブースの設置場所を必要に応じて自由に変更しやすくなる。また、透明樹脂板によって内部の状態を外部から確認できるとともにブースの天井が密閉状態ではないため、一般的なテレワークブースのように消防法の対象とはならずオフィス家具として取り扱える。「これまでテレワークブースは消防法に対応するため設置場所を登録する必要があり、後から設置場所を動かすのは大変だった。今回開発した軽量テレワークブースは、室内の静音性を確保しつつ簡単に設置場所を変えられることが特徴。アフターコロナに向けた新たなテレワークブースとして提案していきたい」(日立の説明員)としている。
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