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次世代防音材「音響メタマテリアル」の市場は2035年に561億円材料技術

音響メタマテリアルの国内の市場規模は2023年に17億円と見込まれているが、EVの静粛性向上の他、オフィスや建築現場の騒音対策などが需要となり2035年には561億円に拡大する。

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 富士経済は2023年7月12日、次世代の防音材として期待される「音響メタマテリアル」の国内市場の調査結果を発表した。

 音響メタマテリアルの国内の市場規模は2023年に17億円と見込まれているが、EV(電気自動車)の静粛性向上の他、オフィスや建築現場の騒音対策などが需要となり2035年には561億円に拡大すると予測した。

 音響メタマテリアルは2022年からオフィスの吸音パネルやエアコンの室外機向け遮音材として実用化が始まった。2023年時点ではエアコンなど家電向けが需要の主体ではあるが、今後はオフィスや工場、工事など建築向けが需要をけん引する。自動車でも、電動化に伴いロードノイズなどへの対策が課題となっておりニーズが高まっている。

 自動車向けはスペックの満足や環境試験が厳しいため、現時点ではサンプル評価などにとどまるが、今後は高級EVを中心に実用化が始まり、採用が広がるとしている。その後、航空/宇宙や医療機器向けで採用が始まり、2035年には561億円に市場規模が拡大する。

 自動車業界では日産自動車が2019年に開発中の音響メタマテリアルを発表した。一般的な遮音材と比べて4分の1から5分の1の重量で同等の遮音性能を発揮できること、従来の遮音材では除去しにくかった低い周波数のロードノイズも遮音できることなどが音響メタマテリアルのメリットだとしている。

 2035年時点で市場の大部分を占めるのがオフィスや工場、工事など建築向けで、同年には2023年比144.7倍の434億円に成長する見通しだ。2020年代半ば以降は集合住宅の床振動の遮断や工事現場の防音パネル、工場の機械や排熱ファンの騒音対策、サーバルームの騒音対策などで需要が広がる。

 オフィスではオンラインミーティングやフリーアドレス制の増加により、音漏れや室内反響音対策でニーズが高まっている。日本は天井開口率が70%以下の場合に消防法によって排煙装置やスプリンクラーの設置が求められるため、開口部を設けるオフィスが多く、開口部からの音漏れの対策として音響メタマテリアルの採用ニーズがある。なお、北米ではオフィスビルの快適性を示す指標の1つに騒音があるため、人材確保のためにも騒音対策にコストをかける企業が多いという。

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