遮音と通気を両立する音響メタマテリアル遮音材、社会実装に向けてパートナー募集:デザインの力
ピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)は社会課題の1つである騒音問題の軽減に貢献すべく、音響メタマテリアル技術を活用した遮音材を開発した。
ピクシーダストテクノロジーズ(以下、PxDT)は2023年4月24日、社会課題の1つである騒音問題の軽減に貢献すべく、音響メタマテリアル技術を活用した遮音材(以下、音響メタマテリアル遮音材)を開発したことを発表した。
PxDTが開発した音響メタマテリアル遮音材は、入射した音波(騒音)と逆位相の音波(散乱波)を生成して騒音を打ち消すメタマテリアル構造を備え、従来技術では困難だった“遮音性能と通気性の両立”を実現する。例えば、音を遮断したくても換気や排熱のために音漏れの原因となる開口部を設ける必要があったり、クルマの騒音を遮りたくても風圧の問題で防音壁を設置できなかったりなど、遮音と通気の両立が求められるさまざまなケースに対応できるという。
音響メタマテリアル遮音材は、開口部があっても高い遮音性能を発揮する。PxDTによると、開口率50%の条件下で30dBの低減が確認できており、換気時などに生じる音問題の軽減が期待できる。さらに、音問題が解消されることで自然換気の活用が進み、消費電力の削減など副次的な効果も得られるという。
また、音響メタマテリアル遮音材の遮音性能は、構造や形状により発揮されるため、目的や求める性能に応じて構成する材料を自由に選択可能。部品点数を増やすことなく既存の筐体に遮音性能を付加したり、間伐材や再生材を活用した音響メタマテリアル遮音材を実現したりできる。
これらの特徴に加え、音響メタマテリアル遮音材は、適用シーンに応じた柔軟な遮音特性を実現する。例えば、特定の周波数帯のみ遮音性能が向上する性質や、低周波から高周波まで幅広い範囲で高い遮音性能を示す性質など、用途に応じたチューニングが可能だ。これにより、不快な音や騒音だけを取り除いたり、音量を小さくしたりすることが可能となる。
音響メタマテリアル遮音材は、空調、建材、什器(じゅうき)、鉄道、自動車といったさまざまな分野での活用が見込まれる。また、素材選択および加工自由度が高いことから、サステナビリティに配慮した製品開発での適用も期待できるという。
現在、PxDTは音響メタマテリアル遮音材の社会実装に向けてパートナー企業を募集するとともに、基本構造の追加や標準製品の拡充、カスタマイズ品の開発などを継続し、幅広い分野の騒音課題/ニーズに対応することで、社会全体の音問題の解消を推進するとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ガラスの反響音を抑えた快適な空間を創出する、透明吸音パネルを開発
イトーキとピクシーダストテクノロジーズは、ガラスに貼れる透明吸音パネル「iwasemi HX-α」を共同開発した。人の声に含まれる500〜1000Hzの周波数帯に特化した吸音構造設計を採用し、ガラスに囲まれた空間で起こる反響音を抑える。 - 「世界初」軟質樹脂によるメタマテリアル3Dプリント技術、多分野での製品実装へ
キョーラクは軟質樹脂による3Dプリント成形品の量産技術の確立に「世界で初めて」(同社)成功。同技術の製品実装の第1弾として、乳房を手術した人向けのインナーパッドをワコールと共同開発した。 - 転倒時だけ柔らかくなる床材、構造×素材×IoTで高齢者を守るMagic Shields
歩行時は硬いが、転倒時のみ柔らかくなり骨折を防ぐ床材「ころやわ」の開発を手掛けるMagic Shieldsは、独自の構造×材料技術によって高齢者の転倒骨折事故の防止に貢献している。その開発背景や創業から1年という短期間で製品化までこぎ着けることができた秘訣について、同社 代表取締役の下村明司氏に話を聞いた。 - モーフィング技術で変形する飛行機の実現へ、鍵を握るメカニカルメタマテリアル
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、さまざまに変化する飛行状況に対して、常に最高の性能を発揮できるような形状をとり続ける航空機の実現に向けて、モーフィング技術の研究開発を進めている。JAXA 航空技術部門 基盤技術研究ユニットに所属する研究計画マネージャの玉山雅人氏、研究開発員の津島夏輝氏らにその取り組み内容を詳しく聞いた。 - 「大気の窓」で冷える放射冷却メタマテリアル技術、日産が純正アクセサリーに採用
日産自動車が放射冷却素材の「Radi-Cool(ラディクール)」を、自動車メーカーとして初めて純正アクセサリーに採用した。全国の日産自動車の販売店において、ラディクールを使用した「サンシェード」「カーサイドタープ」「ハーフボディカバー」を「キックス」向けに発売。今後対象車種を拡大していく予定だ。 - マツダが取り組む音源寄与度分析、簡易モデルを用いた車内音予測手法による効率化事例
マツダは、ダッソー・システムズ主催の年次コミュニティーカンファレンス「SIMULIA Community Virtual Conference Japan 2021」のユーザー事例講演に登壇し、「量産開発適用に向けた効率的な風切り音予測および分析手法について」をテーマに、音源寄与度分析および簡易モデルを用いた車内音予測手法による効率化の取り組みを紹介した。