ワコール、3Dプリントとメタマテリアル技術で自然かつ快適な術後用パッドを開発:3Dプリンタニュース
ワコールはキョーラクと共同で乳房を手術した女性向けの術後用パッドを開発、商品化した。ワコールの研究データと、キョーラク独自の軟質樹脂3Dプリント技術およびメタマテリアル技術を活用することで実現した。
ワコールは2023年3月2日、乳がんなどで乳房を手術した女性のためのブランド「ワコール リマンマ」において、キョーラクと共同開発した「ぷるるんメッシュパッド」の販売開始を発表した。
ぷるるんメッシュパッドは、術後用パッドの長年の課題であった通気性に焦点を当て、キョーラク独自の軟質樹脂3Dプリント技術と、ワコールが長年培ってきた女性の身体の研究データを用いて商品化したもの。自然なバストに近い触感や重み、優れた通気性を備え、着用時の蒸れを低減した着け心地のよいパッドに仕上がっているという。
素材は、軟質樹脂である熱可塑性エラストマー(TPE)が用いられており、キョーラクが保有する軟質樹脂3Dプリント技術と、触感と通気性を両立させたメタマテリアル技術を組み合わせることで、立体的なメッシュ構造を備えたパッドを実現した。形状は、左右どちらにも使用可能なトライアングル型となっており、一人一人の身体になじむ最適なフィット感、優れた通気性を感じられる設計となっている。
「ぷるるんメッシュパッド」のカバーを取り外した状態。立体的なメッシュ構造により触感と通気性を確保している。ワコールの研究データ、キョーラクの軟質樹脂3Dプリント技術とメタマテリアル技術を活用して実現した。素材は熱可塑性エラストマー[クリックで拡大] 出所:ワコール
ぷるるんメッシュパッドのサイズは、M/L/LLの3種類あり、販売価格(税込み)はM/Lが1万6500円、LLが1万8150円。専任アドバイザーが下着の相談や採寸、フィッティングなどをサポートしてくれる「リマンマルーム」の他、ワコール リマンマのカタログ通販および「ワコールウェブストア」での購入が可能だという。
ワコールは、1974年から乳がんなどで乳房を手術した女性向けに、パッドやブラジャーをはじめとするインナーウェアを展開してきた。
現在、乳がんの罹患(りかん)率は日本人女性の9人に1人といわれており、毎年9万人強の女性が新たに治療を開始している状況にある。また、近年は乳房温存手術や再建手術など、手術の方法も多様化していることから、一人一人のニーズに合ったインナーウェアの開発が求められている。ぷるるんメッシュパッドはこうした背景に基づき商品化されたもので、着用者の毎日が少しでも快適になるようにとの思いが込められている。
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