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専門医の知見とテクノロジーの融合で治療のハードルを下げる歯科矯正サービス歯科医療分野での3Dプリンタ活用事例(1/3 ページ)

3Dプリンタ活用が進む歯科医療の現場において、マウスピース歯科矯正サービス「hanaravi」を展開するDRIPS。同社は歯科矯正の専門知識とテクノロジーの融合によって、患者が抱く歯科矯正へのハードルを下げ、効率的かつ治療効果の高いマウスピース歯科矯正の実現に取り組む。その狙いやサービスの特長について、同社 CEOで医師の各務康貴氏に話を聞いた。

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 3Dプリンタの活用が進む分野の1つとして、歯科医療の現場が挙げられる。口腔内スキャナーによって、患者ごとに異なる歯列や歯の形状などの3Dデータを取得し、3Dプリンタによって歯列模型/歯型を製作して治療計画を立てたり、実際の治療や矯正に役立てたりしている。

※画像はイメージです
※画像はイメージです(iStock/Scharfsinn86)

 例えば、健康志向や美意識の向上によって近年関心が高まっている、歯並びやかみ合わせの矯正では、従来のワイヤーによる治療と比べ、安価で目立ちにくいといった理由から、マウスピースによる歯科矯正ニーズが拡大しており、その歯型の製作には3Dプリンタが活用されている。

 マウスピースを用いた一般的な治療では、通常1〜2週間ごとにマウスピースを交換しながら歯列を少しずつ動かしていくことで歯並びを矯正する。つまり、矯正の段階に合わせたマウスピースを数十パターン作る必要があるため、それと同じ数だけ歯型を製作しなければならない。もちろん、歯列や歯の形状も患者ごとに異なるため、大量生産は難しく、全てがオーダーメイドと言ってもよい。こうした背景から、多くの場合、人件費の安価な海外の歯科技工所に依頼し、矯正開始から完了までに必要なマウスピースを一括製造して輸入するという方法がとられている。

 ただし、こうした従来のやり方では、最初の治療計画に基づいて、矯正開始から完了までに必要なマウスピースが一括で製造されてしまうため、万一、途中で治療計画が変更になってしまうと、残りのマウスピースが全て不要となり廃棄され、作り直しが発生して治療期間が長くなってしまう恐れがある。治療期間が長くなれば、途中で治療を断念してしまうケースもあり得るだろう。さらに、患者は一度に大量のマウスピースを受け取ることになり、管理ミスや着け間違えといったことも可能性として考えられるため、患者にかかる負担は大きい。

マウスピース歯科矯正サービス「hanaravi」誕生の背景

 こうした課題に対し、歯科矯正の専門知識とテクノロジーの融合によって、患者が抱く歯科矯正へのハードルを下げ、効率的かつ治療効果の高いマウスピース歯科矯正の実現に取り組んでいるのがDRIPSだ。同社 CEOで医師の各務康貴氏は、大分大学 医学部を卒業後、医師として救急医療や在宅医療に携わった後に、戦略コンサルタントの職に従事し、2019年に同社を創業。2020年5月からマウスピース歯科矯正サービス「hanaravi」の提供を開始している。

DRIPS CEOで医師の各務康貴氏
DRIPS CEOで医師の各務康貴氏[クリックで拡大]

 「医師として救急医療で働き、さまざまな疾患に関わっていく中、多くの人が若いうちから(病気の)予防に取り組めば、将来の疾患リスクが減らせるとの思いがあった。しかし、若い人ほど疾患リスクが少ないため、早くから予防に取り組もうとする意識は当然ながら低い。そこで注目したのが歯科矯正だ。歯の健康は認知症や糖尿病をはじめ、さまざまな病気と深い関係があるといわれている。一方で、歯は見た目にも影響するため、若い人でも自分の歯をキレイにしたい、キレイに見せたいと思われる方が多い。そうした人たちにマウスピース歯科矯正サービスを提供することで、歯をキレイにしているのと同時に、患者本人が意図せずとも、歯や口腔内の環境が改善することで、実は将来の病気の予防にもつながっているという副次的な効果が期待できると考えた」と各務氏は起業のきっかけ、そしてhanaraviにかける思いについて語る。

既存の歯科矯正が抱える3つの課題を解消

 そもそも歯の矯正には、「1.高額な治療費」「2.始めるまでのハードルの高さ」「3.扱える症例が限定的」といった課題がある。一般的な歯科矯正の場合、その治療費は100万円前後必要だといわれている。また、同じ歯科医院でも歯科矯正の専門ではない医院だったり、矯正後のイメージが分かりづらかったりなど、治療を開始する前段階での障壁もある。さらに、矯正の範囲も“前歯部のみ”など限定されてしまうケースもあるという。

 これらの課題を解消するのが、マウスピース歯科矯正サービスのhanaraviだ。まず、価格面に関しては、治療計画と口腔内のスキャンデータに基づいて歯型のパターンを生成する専用3D CADや、歯型造形用にデータを自動補正するツールの活用の他、実際に歯型を出力する3Dプリンタ、熱可塑性ポリウレタンを用いて歯型からマウスピースを作る真空成形機、マウスピースをきれいに切り出すミリングマシンなど、全工程の機械化と製造自動化技術によって原価低減を図り、従来100万円前後かかっていた治療費を約3分の1の価格帯で実現している。

 また、無料相談や口腔内スキャン、その後の経過観察などは同社と提携している歯科矯正の専門医院が携わり、矯正後のイメージの確認や経過観察なども基本的にオンラインで完結し、通院も最低限で済む。さらに、矯正範囲も前歯のみのように限定せず、手術を必要とする症例以外は全て対応できるという。

3Dプリンタで製造した歯型完成したマウスピース 3Dプリンタで製造した歯型(左)と完成したマウスピース(右)のイメージ[クリックで拡大] 出所:ヤマト運輸/DRIPS

 なお、治療の主体はあくまでも歯科医院であり、hanaraviを提供する同社は、提携先の歯科医院と患者をつなげるコミュニケーションシステムや経過観察システムの提供と、サービスを通じた集患の役目を担うとともに、後述するヤマト運輸の羽田クロノゲートを拠点とする歯科技工所(マウスピースの製造拠点)として機能する。

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