ハンコのように回路を形成、ナノインプリントリソグラフィ技術の半導体製造装置:FAニュース
キヤノンはナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術を活用した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を発売した。従来の投影露光装置に比べて製造コストや消費電力の削減に貢献する。
キヤノンは2023年10月13日、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術を活用した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を同日発売したことを発表した。
従来の投影露光装置は、ウエハー上に塗布されたレジスト(樹脂)に光を照射し、レンズを通して回路を焼き付けるのに対し、今回の新製品ではレジストに回路パターンを組み込んだマスク(型)をハンコのように押し付けて回路パターンを形成する。
キヤノンがインクジェットプリンタで培ってきたインク吐出技術を応用し、レジストを回路パターンに合わせ、最適な液適量を正確な位置に塗布。その後、マスクをレジストが塗布されたウエハーに合わせて正確な位置で押印し露光する。押印する際の力やスピードを緻密に制御し、マスク上の回路パターンを忠実に形成する。
重ね合わせ技術は、押印ショットごとに位置合わせを行うダイバイダイアライメント方式を採用。下地の回路パターンのゆがみに対して、レーザー光の熱分布を変化させることで発生するウエハー熱膨張を利用し、高精度に補正する。
新開発の環境制御技術では、高精度フィルターやエアカーテンによりパーティクルと呼ばれる微小な粒子のごみを除去する。
光学系という介在物がないため、マスク上の微細な回路パターンを忠実にウエハー上に再現でき、複雑な2次元、3次元の回路パターンを1回のインプリントで形成することも可能だ。
半導体製造コストの削減につながる他、従来の投影露光技術と比較すると光源の波長による微細化を必要とせず、工程がシンプルで装置規模が小さいため、少ない電力で微細なパターンを形成できる。同社によれば、既存の最先端ロジック向け露光技術と比べて、消費電力を約10分の1まで削減できるという。
既存の最先端ロジック半導体製造レベルの5ナノノードにあたる最小線幅14nmのパターン形成ができる他、マスクの改良により2ナノノードにあたる最小線幅10nmレベルへの対応も可能となる。ロジックやメモリなどの半導体デバイス以外にも数十nmの微細構造であるXR向けのメタレンズなどの製造など幅広い用途に活用できるという。
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