半導体露光装置の生産性向上、キヤノンがウエハー計測機を発売:FAニュース
キヤノンは高精度にウエハーのアライメント計測ができる半導体製造用ウエハー計測機「MS-001」の発売を発表した。
キヤノンは2023年2月21日、高精度にウエハーのアライメント計測ができる半導体製造用ウエハー計測機「MS-001」を同日より販売開始したと発表した。
半導体製造工程では、半導体露光装置を用いて複雑な回路のパターンをウエハーに焼き付ける。高精度な半導体デバイスを製造するには、複数の半導体露光装置を利用して何層にもわたって回路パターンを露光する必要がある。その際に、高い精度で重ね合わせるための位置合わせに使われるのがアライメントマークだ。
半導体露光装置はこのアライメントマークを計測し、ウエハーのひずみなどを読み取り、補正して露光する。半導体製造工程は複雑化しており、ウエハーは変形しやすくなっている。一方で、昨今では高精度な半導体デバイスを製造するために、重ね合わせ精度を高める必要があり、回路パターンによってはアライメントマークは数百点に上る。ただ、各半導体露光装置でこれらの計測を行っていては、スループットが落ちてしまう。
MS-001はウエハーを半導体露光装置へ搬送する前に、アライメント計測の大部分を一括して行い、そのデータを半導体露光装置に送り、半導体露光装置内でのアライメント計測の負荷を下げて生産性の向上に貢献する。MS-001を活用することで、数百点のアライメント計測が必要な回路パターンの露光においては生産性が数倍向上するという。他社製の半導体露光装置との連携も可能だ。
MS-001では、アライメントマークを読み取るアライメントスコープに、キヤノンが従来の半導体露光装置に用いていたラインセンサーに代えてエリアセンサーを採用した。多画素で計測でき、複数のデータから平均値化したデータを取得できるため、低ノイズを実現し、さまざまなアライメントマークの計測が可能になった。
また、新たに開発したアライメントスコープ用の光源を採用することで、半導体露光装置内で計測するよりも1.5倍の波長域を確保、ユーザーの任意の波長でアライメント計測でき、半導体露光装置で計測するよりも高精度なアライメントマーク計測が可能になった。
キヤノンが2022年に発表した、半導体露光装置の異常検知などのユーザーサポートを行うソリューションプラットフォーム「Lithography Plus」との連携も可能になっている。
MS-001の計測データとLithography Plusに蓄積されたデータを照らし合わせてモニタリングし、ウエハー上のアライメント情報の変化を検出して半導体露光装置の自動補正ができる他、アライメント計測から露光までの工程の集中管理が可能となり、CoO(Cost of Ownership)を低減する。
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