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協働ロボットが人の隣で働くために行う、ISO/TS15066に基づくリスクアセスメント協働ロボットのリスクアセスメント解説(2)(3/3 ページ)

協働ロボットを用いたアプリケーションに関するガイドライン「ISO/TS15066」について紹介し、リスクアセスメントを実施する上での注意点を説明する。今回は後編としてISO/TS15066にあるサンプルケースを基により具体的にリスクアセスメントの進め方を紹介する。

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自動搬送車への協働ロボットの搭載

 近年、半導体業界や加工機のロード/アンロードなどで導入が進んでいる、AMR(自律型搬送ロボット)、AGV(無人搬送車)などの自動搬送車に協働ロボットを搭載する場合のリスクアセスメント方法についてもよく質問を受けます。


中国におけるAMRへの協働ロボットの搭載事例[クリックで拡大]出所:ユニバーサルロボット

 例えば、AMRに搭載されているものに対する重力と慣性の合力の中心点が、AMRの積荷スペースの外側に出てしまうと転倒のリスクが高まります。特にAMRと協働ロボットが同時に移動している場合、重心位置の推定が大変困難になってしまいます。

 AMRが移動中に、搭載している協働ロボットも同時に稼働させることは避けるのが無難です。そうすれば、協働ロボットが稼働中はAMRを固定架台と見立て、AMRが移動中は協働ロボットをただの固定貨物と見立てることができ、AMR、協働ロボットの観点でそれぞれリスクアセスメントが容易になります。

協働ロボットの導入へ向けて社内を説得するには

 協働ロボットを導入するには、ISO/TS15066を理解することが必須です。しかし、読み解けば読み解くほど協働ロボットを使うことへの不安や、ISOの厳しい基準を満たすことへの抵抗感が生じるかもしれません。


協働ロボットを用いた溶接。写真は藤田ワークスの事例[クリックで拡大]出所:ユニバーサルロボット

 それは理論が先行してしまい、実機に触れたことがないことから生じる不安といえます。まずは実際に協働ロボットに触れてみることをお勧めします。協働ロボットの導入について社内を説得するにはISOの安全基準を理解し、理論武装をした上で、社内の皆さんに実機に触れていただく場を作るのはいかがでしょう。

 ロボットに実際にぶつかってみて安全に停止する、その時の感触を体感できたら安全性への共通認識が社内に広がるのではないでしょうか。理論と実践は、どちらも等しく重要です。

 それでも導入へのハードルが高い場合、まずはセーフティーレーザースキャナーやライトカーテンを使ってロボットが人の接近を感知し、一時停止させる安全センサー付きシステムを使うことで、動いているロボットと人の接触のリスクは回避できます。

 協働ロボットについて段階的に理解を深めることで、次なる考え方やステップに進めるので、まずは安全センサーの使用も妥協点として一案です。(連載完)


著者紹介:

ユニバーサルロボット日本支社 アプリケーションエンジニアリングマネジャー

西部慎一 (にしべ しんいち)

名古屋工業大学大学院でヒューマノイドロボットの強化学習アルゴリズムに関する研究を修了後、住友重機械工業に入社し、産業用ロボットギアユニットの設計開発を担当。 後にABBに入社して主にインド、タイ、中国などで海外自動車工場の塗装ロボットシステム立ち上げのプロジェクトマネジメントを担当。 2017年にユニバーサルロボットに入社、2020年よりプリセールス活動に注力し、技術トレーニング、新規アプリケーション開発、協働ロボット普及促進のためのリスクアセスメント啓蒙活動などに従事。



⇒「協働ロボットのリスクアセスメント解説」の前編記事はこちら

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