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協働ロボットが人の隣で働くために行う、ISO/TS15066に基づくリスクアセスメント協働ロボットのリスクアセスメント解説(2)(2/3 ページ)

協働ロボットを用いたアプリケーションに関するガイドライン「ISO/TS15066」について紹介し、リスクアセスメントを実施する上での注意点を説明する。今回は後編としてISO/TS15066にあるサンプルケースを基により具体的にリスクアセスメントの進め方を紹介する。

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過渡的接触と準静的接触

 人と協働ロボットの接触は、過渡的接触と準静的接触の2つのパターンに分類することができます。過渡的接触は、オープンなスペースで協働ロボットと接触するパターンで、人の手が上に浮いた状態で協働ロボットとぶつかり、手が逆方向に跳ね飛ばされるようなパターンです。

 準静的接触は、協働ロボットがワークを置くタイミングで人が手を差し込んでしまい、協働ロボットのハンドに手が挟まれるようなパターンです。

 それぞれに対応すべき異なる方策があり、ISO/TS15066で定義されています。接触時間が0.5秒以下の場合は過渡的接触、0.5秒以上接触が継続する場合が準静的接触とされています。

 過渡的接触の場合、人体はある程度大きな力でも許容できますが、挟まれるなど力が継続してかかる場合は許容できる力は小さくなります。表の濃いグレーの部分は「受容不可領域」となります。

許容可能および許されない力または圧力に関するグラフ
許容可能および許されない力または圧力に関するグラフ[クリックで拡大]出所:TS B 0033:2017(ISO/TS15066:2016) 5.5.5.5 図3

 衝突データを数値化したものが下記のISO/TS15066の表で、身体のどの部位がどのような圧力まで許容できるかを数値化し、準静的接触、過渡的接触のそれぞれに許容できる数字が記載されています。

 例えば胸、胸骨、胸筋などについては、挟まれるという接触(準静的接触)では人体は140Nまで許容していることが分かります。

 もし協働ロボットアプリケーションで、胸が協働ロボットと壁の間に挟まれてしまうリスクがリスクアセスメントで出てきた場合、協働ロボットが最大出力できる力は140Nまでに設定しておく必要があります。

 最大許容力は体の部位によって異なります。リスクアセスメントによって人体のどの部位に、どのようなリスクが潜んでいるのを確認することが必要になる、ということです。

 オープンなエリア、過渡的な接触については全て「2」と記されていますが、これは準静的接触による値の2倍まで許容できることを意味します。もし胸とロボットが接触するリスクがあっても挟まれるリスクがない場合は280Nまで許容できることを意味します。

 頭部と顔は「適用不可」です。早いスピードで頭部に衝突することは避けなくてはいけません。


各部位が許容できる生物力学的限界[クリックで拡大]出所:TS B 0033:2017(ISO/TS15066:2016) 附属書A 準静的接触および過渡的接触の制限 A.3.2 圧力と力の最大値 表A.2

 次は手の衝突リスク低減について考えてみます。ハンドの部分に切削加工した鋭利なツメが装着されている場合、手が接触した際に切り傷が生じる可能性があります。これは前回でも触れた刃物のように、ロボットの設定だけでは防げない、本質的な安全設計についてのリスクといえます。

 上記の表でも、手や指はいろいろなパターンの接触のリスクがあるので細かく記載されています。挟まれや準静的接触の場合は140Nが許容ですが、表面の切り傷のリスクは力だけでなく、圧力(例えば人差し指の腹は300N/cm2)の基準が関係します。

 圧力とは単位面積当たりの力なので、接触する面積を大きくすることで、圧力は小さくなります。表面が鋭利なものではなく、丸みを帯びたものであればケガのリスクは低減します。

 ISO/TS15066:2016では、能動的安全設計方策として力またはトルクの制限、可動部の速度制限をかけることに加えて、受動的安全設計方策として接触表面積の増加の他、そのエネルギーの吸収や、エネルギー伝達時間の延長、または衝撃力を低減させる方策を提唱しています※2

 例えば、グリッパーに柔らかいスポンジ状のカバーを装着したり、エッジを落とした丸いデザインにしたりすることで接触面積を大きくし、切り傷を防止できます。

※2 TS B 0033:2017(ISO/TS15066:2016) 5.5.5.4 受動的および能動的リスクの低減手段

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