国際宇宙ステーション向けスキンケアを一般発売、宇宙空間への対応とは:材料技術
ポーラは、宇宙空間でも使用でき、2024年に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載される予定のスキンケアブランド「COSMOLOGY(コスモロジー)」の「コスモロジースペースクルーキット」を2023年10月1日に発売すると発表した。
ポーラは2023年8月28日、都内の会場とオンラインで記者会見を開き、宇宙空間でも使用でき、2024年に国際宇宙ステーション(ISS)に搭載される予定のスキンケアブランド「COSMOLOGY(コスモロジー)」の「コスモロジースペースクルーキット」を同年10月1日に発売すると発表した。
コスモロジースペースクルーキットは、スキンケア製品としては日本で初めて宇宙航空研究開発機構(JAXA)の生活用品アイデア募集に選定され、国際宇宙ステーションへの搭載が決定している。国内のスキンケア製品でISSに搭載されるのはコスモロジースペースクルーキットが初だという。
微小重力下でも使えるように飛散しない半固形ジェル形状を採用
COSMOLOGYは、宇宙と地球の“未来の豊かさ”を追求する宇宙発想の新スキンケアブランドだ。宇宙に視点を置き、その過酷な環境でも豊かさを創出できることが地球の未来にもつながるとポーラは考えた。どのような環境でも、スキンケアの力で自分らしく調和のとれた状態へ導くことを目指し宇宙発想で開発を行うことで、宇宙生活のQOL向上とともに、地球課題の解決と地球の未来の豊かさの実現を目指す。
コスモロジースペースクルーキットは、60gの「コスモロジークレンジングウォッシュ」と30gの「コスモロジーローションクリーム」から成り、価格は7480円(税込み)。2024年1月1日にはコスモロジークレンジングウォッシュとコスモロジーローションクリームの単品販売も予定している。
コスモロジークレンジングウォッシュは、全体の90%以上が水性成分で構成され、洗い流し不要の拭き取りタイプとなっており、ISSのような微小重力下でも使えるように飛散しない半固形ジェル形状を採用し、肌にのせるとローションのような手触りに変化する。
ポーラ化成工業 研究員の木内里美氏は「通常ジェルのような粘度の高い製剤はべたつきが発生しやすい。これを解決するために、エタノールなどを採用するが、エタノールのような揮発性が高いアルコールはISSへの搭載が制限されていた。そこで、コスモロジークレンジングウォッシュの開発では、エタノールフリーが求められた」と語った。
解決策として、肌なじみ成分を配合し、均一に厚みをもって広がる処方を採用して、拭き取りする際の摩擦を感じづらくし、べたつきにくく滑らかでみずみずしい感触とエタノールフリーを実現している。さらに、界面活性剤を通常よりも減らし、保湿剤にクレンジング機能を付与して、肌に負担をかけないクレンジングウォッシュとした。木内氏は「宇宙空間ではコットンだけではなく、ティッシュもクレンジングで使うケースがあると想定し、ティッシュでも快適にクレンジングが行える構造を採用した」と述べた。香りにはみずみずしい森林をイメージしたグリーンフローラルを採用している。
コスモロジーローションクリームは、三次元立体構造処方を採用し、ジェルクリームが肌の上でローションに変化して肌になじみ、使用後にはミルクとクリームを重ねたような感触を体感でき、滑らかな肌を実現する。香りは地球の大地をイメージしたフローラルウッディを採用している。
パッケージデザインに関して、コスモロジースペースクルーキットでは、微小重力下でも無理なく使えるように、ワンタッチで開閉可能なキャップを採用し、コスモロジークレンジングウォッシュとコスモロジーローションクリームの色味を大きく変えることで識別性を高めている。
単品販売されるコスモロジークレンジングウォッシュとコスモロジーローションクリームでは、言語を超えたボーダーレスなコミュニケーションをテーマに掲げ、過酷なストレス環境下でも人の心を明るく豊かにするようなパッケージデザインを採用している。
「コスモロジー」の開発経緯
同社はANAホールディングスと共同で「CosmoSkin」プロジェクトを2020年9月に発足した。同プロジェクトは、宇宙事業への思いで共鳴したANAホールディングスとのオープンイノベーションで、極限状態の宇宙で快適に使えることを目指し、コスモロジーの製品開発を行ってきた。
2021年3月には、JAXAの「第2回宇宙生活と地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」で、ISS搭載を目指すアイデアとして選定された後、コスモロジースペースクルーキットの開発を進め、ISSへの搭載が決定した。JAXAの同アイデア募集は、宇宙生活の課題を起点に、宇宙と地上双方の暮らしを便利にする製品/サービスの創出を目指す取り組みだ。制約のある環境で過ごした宇宙飛行士の声を参考に、宇宙生活のQOL向上および地上の課題解決にもつながる新しい生活用品のアイデアを募集している。
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