天然シルクを超高圧水技術でナノファイバー化、粘性付与で化粧品など用途拡大:材料技術
スギノマシンは2021年2月5日、蚕の繭からとれるシルクをナノファイバー化した素材「シルクナノファイバー」の製造方法を改良し、色味を天然のシルクに近づけることに成功したと発表。
スギノマシンは2021年2月5日、蚕の繭からとれるシルクをナノファイバー化した素材「シルクナノファイバー」の製造方法を改良し、色味を天然のシルクに近づけることに成功したと発表。シルクに含まれる成分を生かした化粧品や医薬品などの用途拡大が期待できるという。
独自のウオータージェット技術を応用して加工
シルクは肌細胞の活性化や肌の保湿、紫外線カットなどに有効な成分が含まれており、化粧品や医療材料などに配合されている。ただ、シルクの結晶構造は強固であり、1μm以下の粒子に加工することが難しい。微小加工ができていない状態で化粧品や医療材料に配合すると、均一な分散や塗布がしづらくなるという問題があった。
これを解決するのが、スギノマシンがシルクを直径約100nmのナノファイバーとして仕上げた素材「シルクナノファイバー」だ。製品名は「BiNFi-s(ビンフィス)シルク」である。
スギノマシンが独自開発した超高圧水(ウオータージェット)技術用機材から天然のシルクを200MPaで高圧噴出することで、シルクの束をほぐすことで製造する。通常のシルク粒子と比較して、チキソ性が付与されることで増粘性が向上し、これに伴いシルク粒子の分散安定性も増している。成形や成膜も容易だ。
今回、スギノマシンはシルクナノファイバーの製造条件を改良することで、従来は淡茶色だった色味を本来のシルクに近い乳白色に近づけることに成功した。これによってシルク本来の色味を生かしながら、シルクナノファイバーの機能性を同時に取り入れた製品開発が可能になる。具体的には「各種化粧品の他、細胞培養のための培地(ばいち)、サプリメントなどの医薬品向け基材としての活用を見込む」(スギノマシンの担当者)という。
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