CO2排出量を約40%減らせる高機能バイオ素材で化粧品容器を開発:材料技術
化粧品容器メーカーのプラシーズは、NECが研究/開発しNECプラットフォームズが提供する高機能バイオ素材「NeCycle(ニューサイクル)」を用いて環境に優しい化粧品容器の開発に成功したと発表した。
化粧品容器メーカーのプラシーズは2023年8月23日、NECが研究/開発しNECプラットフォームズが提供する高機能バイオ素材「NeCycle(ニューサイクル)」を材料の一部に用いて環境に優しい化粧品容器の開発に成功したと発表した。
国際的に高い評価を得ている伝統工芸の漆器が有す漆特有の漆黒を表現できるNeCycleの特性を生かし、意匠性に優れ高級感がある外観を演出した化粧品容器を実現している。プラシーズは、キャップにNeCycleを、ボトルにも環境対応素材を使用した同容器を製品化し、2024年に発売する予定だ。なお、NeCycleのようなABS樹脂と同等の特性を持つバイオプラスチックを化粧品容器に採用した例は少なく、先進的な取り組みになるという。今後は、より良い製品を目指して顧客の要望やニーズに合わせてさらなる改善、改良に努めていく。
環境に優しい化粧品容器の開発背景
近年、身の回りのさまざまな物で環境に配慮した材料の活用が当たり前になっている。こういった状況を踏まえて、プラシーズでは単純にバイオ素材を使用した容器を開発しても特別感がないと考え、付加価値の機能を持つ素材を探していたところNeCycleを知り、2019年からNeCycleをを用いた化粧品容器の試作を開始した。特に成形しただけで塗装をしたような艶(つや)があるNeCycleの漆黒を見て、意匠性で付加価値がある高機能バイオ素材だと感じたという。しかし、試作は容易なものではなく、NECプラットフォームズと協力して幾度となく試作を重ねることでNeCycleの特徴を理解し成形のノウハウを身に付けた。
NeCycleの特徴
NeCycleは、ポリカーボネート(PC)樹脂やアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂と比べてCO2排出量を約40%減らせる高機能バイオ素材で、木材や稲わらなど非食用の植物資源から抽出される天然高分子「セルロース」が材料の約50%を占め、残りの50%も安全な添加剤を使用している。さらに、優れた耐久性を備え、海洋や土壌といった自然環境の中での長期的生分解も実現している。
加えて、プレコンシューマー材として粉砕材を25%混入しても、外観劣化が少なく安定した成形が可能な他、ポストコンシューマー材として繰り返しの成形を行っても物性劣化が少ないことが認められている。装飾性については、高級漆器の美しい漆ブラックの美観を塗装レスで実現し、精緻かつ立体感がある蒔絵調印刷にも対応し、希望のカラーに調色も可能だ。
品質では、日本バイオプラスチック協会から「バイオマスプラ」として認証を受け、指定された化学物質を登録、開示しなければならない仕組みのREACH規制や特定有害物質を含む電気/電子機器に対するRoHS(特定有害物質使用制限指令)に対応し、生分解性製品の国際認証機関であるTuV Austriaの認証「OK biobased」も取得済みだ。
安全性に関しては、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する優れた抗菌性を備え、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性も確認されている。
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